『見知らぬ明日』

『見知らぬ明日』

 

「今度、北海道にラベンダーを見に行きませんか。」

「今が一番いい時期で、見渡す限りにラベンダーが咲き誇って、
正に花で織り成す刺繍といったところかな。」

<行ってみたーい、きれいだろうな。>

そもそもその人と食事をするようになったのは、
ゴルフ練習場でフォームを直してもらったのがきっかけで、
一緒に食事をして、その後も何度も誘われたのだ。
30過ぎかな、結構かっこういい。

学生時代から付合っている彼が転勤で大阪に行ってしまったので
なかなか会う機会がなくなってしまった。
悪いなあと思いながらもおいしい食事に誘われると断れない。
でも食事のその後はなしと決めていた。

最初の食事は、六本木のフランス料理。
「じゃ、あなたと、ぼくの見知らぬ明日に、乾杯!」

<なんてきざな>とは思ったものの、
「お酒は、とりあえず前菜までは、このシャンパンで、
サーモンの香草焼きにはロワールの白のプイィフィメ、」

「そして羊料理には、赤、ボルドーのシャトーラグランジェか、
同じくメドックのポーイヤックあたりにしましょうか。」
なんて分かった風な口のきき方。

しかしまんざら嘘でもない。おいしいワイン、料理にぴったり合う。
イタリア料理の後には、消化に良いからとグラッパを勧めてくれたりもした。

話題豊富で話も上手、思わず身を乗り出して聞いたり、
吹き出して笑ったり、確かに楽しい。
さりげなくエスコートしてくれて、彼にはない気配りがある。
それがなんとも心地よい。
食事の後は必ず家の近くまで送ると言ってきかない。 

でも、いつもご馳走になってばかりじゃ気がひけるので、私が誘った。
学生時代からよく遊びに来ていたこの中央線の街は人で溢れていた。


店までの道すがらこう誘われたのだ。
<北海道か、いいだろうな、でも富良野一泊!>

店内は女性客でいっぱいだった。
「へぇー味噌なの、ロールキャベツのスープの味を選べって?
うーん赤味噌、白味噌、僕の母は関西だからよく甘い白味噌を使ってたな。
おもしろいね、おいしそう。」

「昔さ、学生時代よく皆で鍋に色んな物入れて味噌と一緒に煮て、
わいわい騒ぎながら 、、、、   」

話を聞いているうちに急に彼のこと思い出してしまった。
「北海道さ、やっぱ行けない。ごめんね。」

今度の週末久しぶりに大阪行こう。
彼のきたないアパート掃除して、晩御飯一緒に食べよ。
そうだここで松葉味噌買って行って、ブイヤベース作ってやろう。

ワインはーーーーやっぱ白かな、でもカリフォルニア産。


―――さすがタイトルは良かったのですが、内容がイマイチ?
そうね、男女の恋愛の始まりも<見知らぬ明日>には違いないけど、、、

見事振られてしまったゴルフ男、彼の苦し紛れの言い訳を後ほど、、、

―――以前は松葉味噌のブイヤベースをメニューに出していました。
いずれ復活させようと思います。

『小松左京』

『小松左京』

 

昨日SF作家の小松左京さんが亡くなりました。
大変残念です。
私の日本での大好きな作家の一人です。

『日本沈没』『首都消失』『さよならジュピター』『復活の日』等等
みんな映画になりましたが、そうでなくても小さな作品で素晴らしい小説がいっぱいあります。

文庫本の『小松左京自薦恐怖小説集』これなんかいいですよね。
SF小説の発想も人並み外れたものがありますが、
女性の描写は天下一品です。

 

こんな大作家が亡くなったのに、3軒回ったどこの本屋も
<小松左京追悼コーナー>を出してないことが意外です。
まだ一日ですから、間に合わないのは解りますが、それらしきビラとか
出してもいいんじゃないかと思います。
JUNNKU堂は近々コーナーを設けるって言ってました。

ファンになったのは、大学1年の時先輩から借りた週刊誌に連載されていた
『見知らぬ明日』を読んでからです。

当時ソ連と中国が国境を挟んでいざこざがあった時分です。
そこに地球外生物がやってきて攻撃を始めるものだから、
ソ連も中国もお互い敵が攻めてきたと勘違いして
両国が戦争を始め出す訳です。
それを取材する日本人ジャーナリストを軸に話が進みます。

ところが地球外生物の火器があまりに強力で歯が立たない。
さてはて地球の明日はどうなっちゃうんだろう———-

なんてストーリーだったと思いますが、
その、<まだ見ぬ明日><見知らぬ明日>っていうのが鮮明に残っていて、
全然内容は違うのですが、ずーーーっと後に書いた私の文のタイトルに使いました。

地球の自転を止めてしまう『夜が明けたら』
人の体と牛の顔を持った『件(くだん)の母』等短編作

タイトルは忘れましたが、
京都のある女性を父と息子が同時に好きになる話、
天然記念物の鳥の餌にされる話。
どこにでも現れる宇宙蠅。

とんでもない発想を緻密な表現力で書き上げる独特の文章は今の作家にはない
スケールの大きさと日本古来の懐かしさみたいなものを感じます。

 

ご冥福をお祈りします。

 

 

 

『三越で』

以前新宿三越に出店していた時、
お子様連れのおかあさんがいらっしゃって、
『えーーっ懐かしいここに出来たんだ。』
と言われるのを聞いて、書いておいたものです。
今お出ししているリーフレットに載せてあります。

 

『三越で』

「あれっ、うそ、こんな所に出来たんだ。」
知らないうちに、子供の手を引いて、カウンター席に座っていた。

1週間後に控えた、子供の小学校受験に備えて、新しいジャケットとパンツ、
ついでに私のブラウスもと、新宿のデパートに寄った帰り、
買い忘れたパンを求めて駅に近いこのMデパートの食品売り場に足を踏み入れた。
今日もそう、何かに追われているような毎日。

なかなか子供に合うジャケットがなくて、つい時間が過ぎてしまった。
午後は塾がある。それに遅れないよう帰らなくては。しかし疲れた。

食事もできるんだ。そうだここで昼ご飯食べて行こう。
ちょっと高めの椅子に座って、子供は珍しそうにきょろきょろしている。

そう、もう10年になる、忘れもしないこの大豆をあしらったロゴマーク。
学生の頃ほんとよく食事に入った。味噌も買った。

最初は田舎の母が上京して、吉祥寺だったら、最近テレビで見たお店がある、
とか言って私を連れて行ってくれたのが始まりだった。

オリジナリティー溢れる素材重視の味噌料理が気に入って、4年間通い続けた。
サークルの<追い出し>もここでやって結構好評だった。
その店の支店がこのデパートにも出来ていた。

卒業、就職、恋愛、結婚、出産、育児、そしてお受験。
お決まりのコースを駆け足でやってきたって感じで、なんとなく息が切れてきた。
まだこれから越さなきゃならないハードルは延々と続く。

それに最近子供がご飯をあまり食べなくなったのも気がかり。
「あなたの体のためを考えて、頭がよくなるように、元気でるように、
ママがんばって作ってるのよ。ちゃんと食べてよ。」
「うん、でもあまり食べたくない。」昨日の夜も残してしまった。

  そうだ注文しなきゃ。「ロールキャベツのゴマクリームソース下さい。」
「はい、ありがとうございます。すぐご用意します。」元気な声が返ってきた。

「この、ロールキャベツね、ママが学生の頃大好きでよく食べたのよ。」
「おまちどう様、ごゆっくりどうぞ。」
そうそう、これこれ。あはっ、やっぱおいしい。懐かしい、この味。

「僕も食べる。」珍しくこの子が自分から食べるって言った。
「どう、おいしい?」
「うん、ママも好きだったんだろ。やっぱうまいよ。」
あっという間に一皿食べてしまった。「すみません。あと一人前下さい。」

一生懸命栄養のバランス、カロリー考えて、この子のためばかり考えて、
それが逆に食事を押し付けて来てしまったのかも、ふっとそんな気がした。
自分の食べたいものより、子供の好きなもの。夫の好物より、子供の栄養バランス。

この頃夫の帰りが遅く、家で食べなくなった。飲んで帰ることも多い。
それでか何となく、二人の関係もぎくしゃくし始めた。
そっかー、この子なりにプレッシャーみたいなもの感じていたんだ。

もういいや自分の好きなもの作ろう、夫の酒の肴作ってやろう。
そうだよ、これでも私の人生の一部だもの。私は私、子供は子供。

なんか、肩の荷が下りた様な、目の前が明るくなったような、そんな気がした。
「ねえねえ、塾さぼって、どっか遊びにいこうか?」
一瞬怪訝そうな目をしたが、次の瞬間輝いた。
「うん、ディズニーシー行きたい!!」

うふっ、味噌少し買って行ってロールキャベツ作ろう。
よし、夫の携帯にメール入れてやろう。
<おーい、今日はロールキャベツのみそスープだぞ、早く帰っておいで>

夏メニュー始めました(夜)

Mid Summer MENU 2011

2,500円

 

1ドリンク付き(ビール小瓶、赤or白orロゼグラスワイン、冷酒、焼酎、シードル

ウーロン茶、ジンジャーエール、から1品)

 

下から4品お選び下さい①~⑳

 

①   味噌漬け豚サラダ

②   味噌漬け牛タンサラダ

③   豚しゃぶサラダ

④   揚げ茄子と豆腐のサラダ

⑤   ロールキャベツ豆乳スープ

⑥   ロールキャベツゴマ&ワインソース

⑦   味噌汁餃子

⑧   味噌だれ焼き餃子

⑨   豆腐田楽

⑩   焼きナス田楽

⑪   味噌カツ

⑫   効き味噌

⑬   味噌漬けクリムチーズ

⑭   ゴーヤ味噌チャンプル

⑮   夏野菜のラタトィユ

⑯   モツ煮

⑰   ミニ豚丼

⑱   ピリ辛味噌リゾット

⑲   焼きナス辛子スープ

⑳   コーヒーor紅茶(チーズケーキorパウンドケーキ付)

 

+500円で1品追加できます。

 

『花屋のオープニングパーティーで』

味噌はおいしくて、簡単でヘルシー以外に
人の心を繋げると言うか、団欒を提供したり、
本音で気持ちを分かち合える空気を作るみたいな
そんなところがある様な気がします。

 

『花屋のオープニングパーティーで』

「ったく、何なのこのシレッとした冷たい空気は。」
つい一人ごちてしまった。

三十台半ばにして大一番、私としては人生を賭けて打って出た、
赤坂のフラワーショップ、のオープニングパーティーだったのだが、
今一番盛り上がらない。

 三々五々、昔の会社仲間、仕事仲間が二、三人連れでやって来てその時は、
「おめでとう、わー素敵なお店じゃない。」

「凄いオールドローズいっぱい、きれいじゃない、
私大好きこの花。がんばってね。」

 と賑やかなんだけど、いつの間にか仲間同士のひそひそ話しになってしまい、
あながち寒いのは冷房の効きすぎのせいでもない。

 ちょっと前、代理店の男がドンペリを持って現れた時は
「おおっー凄い、じゃあ乾杯!」と一時大いに盛り上がったものの、
その男の自慢気なフランス話に妙に座が白けてしまい、
より一層静かになってしまった。

 それにしても遅いなアイツ。

30分位遅れるとは言ってたものの、かれこれ一時間になる。
田舎の高校時代の同期で同じスポーツサークル。
私はマネージャーだった。

 家が同じ方向でよく一緒に帰った。
背は高くまあ格好いいし、悪くはないなと思ってはいたものの、
二人でラーメン食べる以上の仲にはならなかった。

 久々の上京で母校の大学に顔を出してから来るなんて言っていたのに、
・・・・・・・来た!

相変わらず飄々として一時間遅れに悪びれる風でもなく、
開口一番、

「なんだよ、花屋にしちゃ色気ないなぁもっと若い子いないの。」

まったく「いいの、ここは飲み屋じゃないんだから。」

 そして彼「はい、お土産」とケーキ箱を差し出した。

「なにこれ」蓋を開けてみると、懐かしい香りが広がった。

「味噌じゃない。」

 「そうなんだよ、これがうまいんだ。キュウリに付けて食ってみな。」と、
カップの蓋を開けると、
野菜スティックで味噌をすくって差し出した。

 「おいしい」

 「だろ」

 「うん、おいしい、おいしい」
少し塩辛さはあるものの、甘くてこくがあり、まろやかな口当たりで、
洋風の味に慣れた舌に妙に新鮮。

 「学生の頃よく食べに入った店で味噌もいっぱいあって、
量り売りはカップに入れて売ってくれるんだ」

 香りに誘われてか、一人二人と寄って来た。

 「何、何、それ味噌?かわいい、アイスクリームみたい。」

「うまい」「うんおいしい」

「これって麦みそ?」「なつかしい」

 「おれんちは昔から赤だしみそなんだ。」

「じゃ出身愛知?同じだ」「豆腐の田楽味噌うまいんだ」

 「いや、なんたって味噌は越後だよ、米が違う。」

 「いーーや、信州味噌が一番だよ。」

 「ねえねえ、今度家でみそ汁パーティーしない?」

 「それいいね」

 周りがなんとなくざわついてきて、あちらこちらで笑い声が大きくなった。
名刺を出し合ったり、ビールを注ぎ合ったり、
ドンペリ男までが方言丸出しで大声で喋ってる。

 部屋の温度が上がった。

 そう言えば、アイツはどこへ行っちゃったのかしら・・・・・・

いたいた、この中の一番可愛い子捕まえて、鼻の下伸ばして喋ってる。
しっかり左手に味噌カップ持って。

 そうね、今度私もその店とやらへ行ってみよう。
いい男つかまえて、うまい味噌料理作ってやろう。
こう見えても料理結構得意なんだから。

 

 

 ————-以前私がお呼ばれしたパーティーに味噌をおみやげに
           持って行ったことがあって、そういえばこんなこと
                      あったかなと書いてみました。  

 

『最高のアクセサリー』『3度目の奇跡』

過去のブログの中で比較的<拍手>の多かった文章を二つ選んでみました。

『最高のアクセサリー』

 

「はい、誕生日プレゼント。35歳かしら、もうおじさんね、」

「でもとりあえずおめでとう。」
そう言って彼女白い封筒を手渡した。 

ここは乃木坂に近いとあるクラブ。

会社の2年先輩の叔母に当たる女性がやってると言う、
まそれほど高くは無く、気軽に寄れる店。

彼女を連れて行くのは2回目。

 開けてみると下北沢の劇場のチケット2枚が入っていた。
≪東京乾電池≫の芝居の指定席券だ。

 「あっ、どうもありがとう、へええ、芝居のチケット?」

「そう、結構評判良いみたいよ。この日夜仕事入ってないって言ってたわよね。」

「そうだよ、5時半には上がるよ。」

 「良かったら私を誘って?!」

 「えっ、うん。も、もちろん誘うよ。当たり前じゃん、一緒に行こう。」

「よーかった、嬉しい!」
「違う人と行くって言われたらどーしよう、ってドキドキしてたの」

 この大嘘つき、何がドキドキだよ。
俺が絶対誘うと100%分かっててそう言うんだから、よく言うよ。
一人毒付いた。

 と、いきなり店のママが割り込んできた。

「あーーら、二人して何ごちゃごちゃしてるのかしら?」
「まあ、東京乾電池じゃない、私この劇団好きなのよ。
ねえ、誰と行くの?私と行こう!連れてって!」

 冗談じゃない、誰がこんなおばさんなんかと、

 「私ちょっと、お手洗い。」彼女が出て行ってしまった。

気を悪くしたかな、ちょっと心配。

 ママと二人きりになると、
「ばかね、行く訳ないじゃない、ちょっとからかっただけよ。」

 「でも、あの子凄く良い子よ、手放しちゃダメよ。」

「綺麗だけじゃない、センス良いし頭も良い。
なかなかあんな子いないわよ、かなり年も違うでしょ、
あの子未だ女子大生でしょ。でも二人中々良い線いってるわよ。」

 「仕事柄いろんなカップル見てるし、話したりもするけど、
あそこまで出来た子まずいないわね。
うらやましい、私が男だったら放っとかないね。」

 「いいこと、あなた位の年の人、よく女性連れてくるけど、
勿論奥さんじゃないわよ、それに関して私は良い悪いは言わない。

でもどうせ連れて歩くなら良い女選びなさい。」

 「その連れてる女性を見て、私たちその男性を見極めるから。」

 「どんな立派なスーツ着てロレックスしてても、
連れてる女、見るからにアホ、どんなにスタイル良くても中身ない女、
これだとその男会社ではどんなに偉いか知れないけど、ダメね。

もう体だけじゃんってミエミエ。その男の価値ガタンと下がるわね。」

 「逆にその人がそんなに身なりは大したことなくても、そう、あなたみたいに」

「連れてる女性がセンス良くて、頭も切れて、ユーモアの分かる
しかも気の付く子だったら、それで人一倍可愛いときたら、
その男性の評価抜群に上がるわよ。」

 「言ってみれば最高のアクセサリーよ。」

 「あなた今最高のアクセサリーしてるわ、
あの子に見合う様あんたも仕事、遊び?がんばんなさい。」

「お待たせ!あら二人で何の話ですか。乾電池二人で行かはるんですか?」

 なんでそこで関西弁になるんだよ。

「行かないよ、ママは残念ながらその日は仕事なんだって、ほんと残念。」

 「あーーら、それで仕方なく私と一緒に?嬉しゅうございますこと。」

 

誕生日プレゼントに芝居のチケットもらうことも初めてだし
《よかったら私を誘って》なんて言われたことも、

なんとも新鮮で、いわゆる胸がキュンと締め付けられて熱くなり、
そしてますます彼女に引かれて行く自分を感じていた。

 <もちろん、手放しはしない、アクセサリーなんて、そんなんじゃない。>

<それに仮にどんなダイヤモンドだって敵いはしないさ。>

 

 

 

―――――ほんと、ここまで来ると男の妄想って留まるところを知らない、
って感じかな。中年男のしがない希望?願望?欲望?つまり妄想。

駅に貼られた芝居の広告ポスター見ながら、こんなことあったらなあと、
かなり前にノートに書き込んだものを仕上げてみました。

 

———次は仕事で出張の、新幹線の発車際に思いついたのもです—-

 

『3度目の奇跡』

 そうだよな、取れるわけないよな。何せ夏休み最初の土、日だもの。
宿なんて空いてないよ、無理。

だって明日だよ、しかも観光名所、人気のホテルときたら、、、ま、ダメだろう。
でも一応電話だけしてみるか。

 「えっ空いてる!」

 ついさっきキャンセルが一件、ツインで一部屋なら取れる。
うっそー、ラッキー、

「えっ、はいお願いします。」やったね!!

 ん、でも新幹線がなあ、、、1時間前に行ってホームに並ぶのも嫌だし、、、

恐る恐る窓口で、
「すみません明日なんですけど、はい、2枚。
いえグリーンでなくても、普通で、
えっグリーンは満席、じゃ普通なら空いてるとか?」

“そんな訳ないだろ”て顔で、窓口駅員はボタンを入力して行く。

 画面が現れた。緑のランプが点いた。

「取れますね、10時12分、12号車10番のD、E」
窓口が不思議そうに言った。

「それ下さい!」

 ありゃあ、買えちゃったよ、うそみたい。どうしよう。

ええい、こうなったら男は度胸、
思い切って誘ってみよう。

 

夜の食事の後で切り出した。

 「ところで、明日なんだけど、うん急にゴメン」
「確か空いてるって言ってたよね?」

 「そう、一緒に行かない?」

「前から出張で行くって話してただろ?」

「あー、うんホテル一泊だけど、予約取れたかって?」

「うん何とか、そう最近割と有名なホテル。」

 「いいよ、無理にとは言わないよ。気が向いたら来てくれればいいし、」
「都合悪けりゃ来なくても構わないし」

「僕?僕は仕事あるから、どっちにしたって行かなきゃならないから、うん、」

 「仕事はそんなにかからないから、終わったらあちこち、一緒に行こうよ。」

「天気良さそうだし、暑いけどおもしろいと思うよ。」

 「とにかく新幹線のチケット渡しておくから、」

「うん、取れたよ奇跡的に!」

「直接この時間に列車に乗って来てよ。」

と言って隣りの指定席のチケットを手渡した。

 

 翌日、10時10分、新幹線ひかり112号、
隣りの席は未だ、、、空いたまま。

 他の席は一杯、家族連れやグループ、カップルで満席。
皆笑顔で喋ってる、楽しそう。

 そうだよな、来ないよな、来る訳ないよな、突然だったし、
しかも一泊だし。

ま、しょうがないか、一人仕事して早く帰ろ、
名物の味噌でも買ってさっさと帰って来よっと。

 10時12分定刻、列車は音も無く走り出した。

過ぎ行くホームを眺めながら、ひょっとしてホームにいたりして、
遅れて今にも駆け足で階段登って来たりして、

思わず目を凝らして見渡してみる。

 ある訳、ないない、ふーっと大きなため息をついた。

偶々奇跡的に宿と列車の予約が取れただけ。

世の中そう甘くはないさ。

三度目の奇跡なんて、、、

 

うしろで<コツコツコツッ>足音が止まった。

声がした。

 「すみません、その席空いてます?」

 振り返ると、旅行カバンを手にした彼女がニコニコして立っていた。
チケットを手に。

 「くそっ、やられた」―――でも私の顔には満面の笑み

 

———こんな彼女がいたら、ハラハラ、ドキドキだね。
たまたま遅れそうになって慌てて最寄のドアから飛び乗って
12号車まで歩いて来たのか、はたまたわざと
ハラハラドッキリさせようとそうしたのか、それは分かりません。

 

 

 

 

第37回吉祥寺『ふれあい夏まつり』

今年も東急デパート西広場で第37回吉祥寺『ふれあい夏まつり』が開催されます。

当店でも屋台で<味噌モツ煮>と<ピリ辛味噌トッポギ>を出します。

只、台風が心配でどうなることやら、逸れてくれるのを祈るばかりです。

無事開催されれば、私は本部テントにいます。お金集めです。

皆さまのお志お待ちしています。

 

第37回吉祥寺『ふれあい夏まつり』

 

『女子学生会館』『ジョギングの楽しみ』

当店の最初の頃のリーフレットに書いて評判の良かった文と
その続編を一度に載せてみました。



『女子学生会館』

 

<あれ、こんな所に女子学生会館がある。>

<おっかしいな3年間ずーっとこの道通ってるのに
どうして気が付かなかったんだろう>

と思いつつ公園に通じる小さな商店街を車で通り抜けた。

そしてその日の午後4時、一人のアルバイトの面接をした。

「へええ、公園通り三丁目て言うと、いつも通る道だ。
あの辺に女子学生会館あるよね。朝通ったんだ。」

「はい、その学生会館に住んでいます。」

「へえー、偶然だねー。あんな所にあったなんて知らなかった。
今朝初めて気が付いたんだよ」

明るく、快活で物怖じしない元気さが気に入って、
次の日から働いてもらうことにした。

 

仕事の覚えも早く、「いらっしゃいませ!」とにかくよく声が出る。
対応もはきはきして、お客とも笑いながら会話が弾んでいる。
若いのに珍しい。

「この味噌少し貰っていいですか。みそ汁にして味見てみたいんです。」
とにかく味噌に興味があるらしい。

そしてお客にも
「この味噌おいしいですよ。豚汁にしてみたんですがすごく合います。」

「かわいい子入ったね。明るくて良い子だ。」
お客の受けは実に良い。

夜見るからだろうか、肌の色が白く透き通っている。
しかし化粧っ気は全然ない。ショートカットで笑うとえくぼができる。
手がきれい。すらっとしてよくTVのコマーシャルに出てくる手よりきれいな位だ。

 

ある時、食器を手渡しして思わず触ったことがある。
どきっとした。

「随分冷たい手だね。」

「はい、でもその分ハートは熱いんです。」
笑いながら応えた。

面接で聞いたことがある。
「どうして、味噌屋で働く気になったの?」

「家が佐賀の小さなお寺で昔から味噌を造ってて好きだったから。
でもここには佐賀の味噌を置いてないので残念。
美味しいのに、今度置いて下さい。」

「お寺の娘さんとは、珍しいね。」

なんでも古くからあって、由緒あるお寺らしい。

 

シフトは必ず夜だけ。昼は学校があって、けっこう宿題なんかも多いらしい。
「土、日たまに昼はできない?」聞いても、

笑いながら
「だめなんです」

そして必ず何も持たないで店にやってくる。
「あれ、カバンとか、ハンドバッグ持って来ないの?」

「はいっ、近いからこれだけあればいいんです。」
とジーパンのポケットから出した100円玉を見せた。

近くても電車に乗る訳だし、普通年頃の女の子なら、
せめてポーチ位下げてくるのに、不思議な子だ。

仕事が終わると10時までに帰らなくっちゃ、と飛ぶように走って帰った。

 

数ヶ月が過ぎて3月も終わりの頃、

「今度のお給料、暫く旅行に出るので、実家に送って下さい。
また帰ってきたら仕事させて下さい。」

何時帰ってくるともはっきり言わないで、そのまま居なくなった。

 

給料は現金封筒に入れて、実家のお父さん宛に出した。

1週間して、封書が届いた。佐賀からだった。

<突然の現金封筒に驚いています。>
<どういう経緯で娘にお金を届けて下さったのか、
アルバイト代と書いてありましたが、
いつから働いていたのか、いつまでいたのか、
多分何かの間違いかと思います、、、、、、>

と言うような事が達筆な筆書きで記してあった。

そして最後には、「家の娘は2年前事故で亡くなりました。」と。

 

うっそー、いっやぁー、そんなあぁー、、、じゃあ彼女は、、、
嘘そんな訳は絶対ない。あんな元気な子が、...幽霊?

住職であるお父さんは、彼女が亡くなって以来、
夜10時には必ずお経を上げていると言う。

そう言えば思い当たる節も、

そう必ず夜しか働かない。しかも10時には必ず帰る。
財布も持ってない、かばんも。
そして異常に色が白い。

 

そして更にもう一つ確かなことがある。

彼女の面接の朝以来、
毎朝晩その前を通って来た公園通り3丁目の女子学生会館が、
彼女が居なくなったその日から見当たらない。

確かこの辺だったと、何回見てもない。
遂に車から降りて、商店の人に聞いた。

「ああ、あったよ昔は、でも2年くらい前かな、事故かなんかあってから、
学生入んなくなって、
取り壊して違うビル建ってるよ。」

「..........」

又帰って来ると言ってた。ひょっとしてそうなるかも知れない。
いいよ、帰って来いよ、元気な声聞きたいよ。
そうだ佐賀の味噌、仕入れてみようかな。

どこかで彼女の笑い声が聞こえてきそうな

 

........、そして公園の桜が満開になった。

 

 

————-そして次がその続編です。

 

『ジョギングの楽しみ』

 

いけね、雨降って来ちまったよ。

そこはかとなく沈丁花の香りが漂ってくる秋の夕暮れ時。

毎週休みの月曜日の夕方、自宅から甲州街道、久我山病院、
寺町通り、甲州街道と、約6kmのジョギングを10年続けている。

まあ30分位は大丈夫だと思って走り出して2500m位、
寺町の裏側辺りまで来たら、ポツリポツリ雨粒。

本降りになる前に早く帰ろう。

病院の手前を左に曲がってショートカットだ。
小道に入って、暫くして、後ろから自転車が近づいて来た様だった。

“チリンチリン”小さなベルが鳴る。
狭い道を左によけながら走る。

道は一本。何時まで経っても、自転車は追い抜いて行かない。
あれ、おかしいな。曲がる道はないし、
もうとっくに追い抜いてもいい筈なのに。

直ぐ後ろでチリンチリン鳴らして、タイヤの音までしてたのに。
思わず振り向いた。

何も誰もいない。
引き返したのかな、まいいか。
そのま走り続けた。

 

雨は上がっていた。気がつくと右手に中央高速らしいものが見える。
見えるということは、、、やや明るくなった。

もうそろそろ暗くなっても良い頃なのに、逆に明るくなっている。
みるみる明るくなってまるで真昼だ。

民家の塀に沿って小道に入った筈なのに
周りは背の高い夏草が生い茂って家らしき物はない。

小さい頃よく行った、そう蓼科の山荘から見晴台に向かう小道みたいだ。
ヒマワリが咲いていてトンボも飛んでいる。

あれーーーーここはどこだ、おかしいぞ、
呼吸が乱れた、心臓がドキドキした。

明らかにおかしい。こんな筈はない。
どーーしたんだろう。スピードを上げた。

先方にお寺らしい屋根が見えた。

いつの間にか本堂らしき建物の前に出ていた。
左手に鐘楼がある。
手水場の後ろから女の子が現れた。

「ドキッ、」

「あれっ、ひょっとして、、、、久しぶり。あれから何処行ってたの?」

以前内でバイトしてて、ふらっといなくなったあの佐賀のお寺の娘さんだ、
お父さんから手紙頂いた、あの娘だ、思わず近づいて行こうとしたが、
彼女表情が険しい、いつも笑っていたのに。

「来ちゃいけない、早く、早く、走って、走って。右手の門から外に出て!」

「えっ、何、何?」

「ボスの来る所じゃないから早く外に出て!」
にらみつける様に私を促した。

訳も分からず、言われるまま早足に門の外に出た。

あれっ、ここはいつもの寺町通りだ。辺りは暗い、真っ暗だ。

前からライトを点けたバスが近づいてくる。

いつもの、マスクをした運転手だ。
が、よく見ると、マスクをしているのは運転手じゃない、

白衣を来た若い男だ。

 

「気が付かれた様ですね。」

後で聞いたら、そのおばさん、自転車に乗って買い物の帰り、
道が狭いので、ベルを鳴らして追い抜こうとしたら、
前を走っていた私が、いきなりふらっと倒れたらしい。

慌てて家に帰りご主人と息子さんを連れて
この病院まで運んでくれた、と言う。

ふうん、お陰で九死に一生を得た訳だ。

と言うことは、あのお寺の彼女、
ぼくをあの世からこちらへこの世に生き帰らせてくれたんだ。

それでこちらへ来ちゃいけない、って怖い顔して言ったんだ。

でももう一度会いたいな。

 

なーんてね、、、

ジョギングの楽しみの一つは、こんなんに色々空想できること、
なんせ40分は長いから。

 

 

———-今でもジョギングはボチボチしていますが、
走るのが前よりきつくなりました。

 

妄想話p-2

以前ライブドアブログに書いていた文で、長いため一度では載らず
2度に分けて載せていたものを、今回一度で載せてみます。

やはりこの方がわかりやすいし
前のブログがアクセスしにくくなってしまったので、
これからも気に入った文、再度アップして行きます。

 

『言い訳銀行』 

「それで、昨日の夜は何処へ行ってたの。」

朝ごはんの用意を済ませると、自分もテーブルに着くなり、
さりげなく発せられた妻の一言に、
後頭部をがつんと真綿で包んだバットで殴られた様な衝撃が走った。

予期せぬ問いかけに、一瞬目が宙をさまよった。彼女はそれを見逃さなかった。

 「えっ、うん、あー、そのー」言いよどんでいると畳み掛ける様に、
「だから何処へ誰と行ってたかって聞いてるの。うーうーじゃないでしょ」

まずいぞ、これはやばい、知ってるのかな、

会社の後輩の女性と食事して、ついHホテルへ行ってたなんて、
こんな事、口が裂けても言えない。

 何とかうまく言い逃れなくちゃ、

焦ればあせるほど頭の中では色んな地名が大回転で回っている。

 「渋谷」

いけね、彼女との待ち合わせの場所だ。

「へええー渋谷、渋谷の何処?」

バカかお前は、大体渋谷なんて40過ぎた男が行く場所じゃない。

これで半信半疑で問いかけた妻の疑惑が一挙に、ソファーの横に転がってる
バランスボールの如く膨れ上がるのである。

 大体において、妻が夫の動向を尋ねる場合は大まかに三つに分けられる。

 一つ目は何も疑ってはいない。只好奇心だけ、疑惑度0.

二番目、然程気にはしていないがひょっとして、疑惑度20%。

三番目、かなり怪しい何でも疑ってかかる、疑惑度75%。

 一番目二番目はそれほど気にすることもない、ありのまま話せば問題ない。
もしくはさりげなく話題をそらせばいい。

 注意すべきは三番目の疑惑度75%以上の場合である。

これを疑惑度0にまで限りなく近づけるにはかなりのテクニックが必要となる。

 肝心なのは嘘をつかないこと、嘘は突っ込まれると必ずぼろが出る。
つまり嘘をつかないで言い訳をする、これが大事。

 じゃあどうするかって?

先ほどの朝の夫婦の会話に戻ろう。

 彼女の場合はおそらく日ごろの夫の帰宅時間やら何やらで
少し怪しいと睨んでいたのではないか、
すなわち疑惑度50%。

そこへ来て『渋谷』なんて言うもんだから一挙に90%にまで膨れあがったのである。

これからどうするかって?

 まあ言ってしまったのはしようがない。『渋谷』から始めましょうか。

 「うん渋谷、取引先の若いのが今度渋谷フードショウに出来た新しい店見たい、
そう東急の、って言うんで、そこで待ち合わせして、
とりあえず見て、ちょっと試食もしてみたんだよ、
そしたらさ、仕掛けは良いんだけど、味がイマイチってとこか。」

「そりゃあ勿論味噌料理に関しちゃあお前とも行った吉祥寺の
あの店の方がダントツさ、それにそこは渋谷にしては値段が高い。」

 「そうこうしていたら、その会社の部長の、ほらよくゴルフ一緒に行っていただろ、
北川さ、彼から携帯入って、
今から銀座で飯食うから一緒に来いって言うんで、
ええっーと思ったんだけど、とにかく行った訳だ。」

 「勿論その若い方のかれも一緒さ、まあ北川とも久しぶりだったし、
そうしたらなんと、接待の席じゃない、もちろんされる側。」

 「そう銀座の飛雁閣なんったら大した店じゃん。僕なんかが行って邪魔にならない、
聞いたんだけど、大丈夫大丈夫気安い相手だからなんて言うから、
ご馳走になったんだけど、名刺もあんまし持ち合わせがなくて参ったよ」

 話が込み入ってるけど、込み入ってる方が良いのです。

そしてそれを出来る限り具体的に話す、
つまり女性に想像力を働かせちゃ駄目なんだよ。

 そしてここで重要なのは、この話が嘘じゃないこと、本当にあった事、
本当に過去に接待の席にのこのこ着いて行った時の事、

ただし昨日じゃない。

何日か何週か前に実際にあったこと。
それをそのまま何も隠すことはない、何のやましいこともない時の事、
これをありのまま喋ればいいのです。

 後ろめたい昨夜の事ではなく、何のやましい事もない時の話だから、
すらすら話せるでしょう。
そして自分もその時の気分に入り込んじゃうのよ。

そうすれば奥さんだって信じ込むって訳よ。

これが私の言うところの《言い訳銀行預金》

過去に行ったことのある、それでいてかみさんには話してない所、
そしてその状況、誰とどうしてどうなったか、なぜ遅くなったか、
を記憶の定期預金として持っておくこと。これが大事。

 夫婦だからといって何から何まで全てその日にあったことを洗いざらい喋ることはない。

あっこれは使えると思えば話さないでそっと記憶にしまっておけば良い。

そしてそれを引き出したら、ちょっとその内容を膨らませて話せばいい。
聞いてても楽しい様に、これが思いやり。

 ちょっと話は反れるが、
よく言われるのが、夫婦だから何でも話すのが大事。
楽しいこと、辛いこと何でも二人で話し合えば、楽しさも二倍になるってね。

だけど辛い事、嫌なことも二倍になるんだよ。
二人で分かち合えば辛い事は半分ずつ、これは嘘。

 どうして一人の辛さを他人に背負わせるのか?
嫌なことは自分だけで我慢すればいいじゃないか。

かみさんとはいえ人にまで嫌な気分にさせる事はない。

 話が横道に逸れたけど、さてと仕上げ。

いくらがんがん飲んで食べても、中華じゃいいとこ11時でしょ。

妻は言うでしょう「だったらそこでさっさと帰ってくればいいじゃない。」

だけどそうは行かないのが男の社会。
「せっかく北川さんとお食事できたんだから、もう一軒、行きましょう、
歩いて行かれる所に馴染みの店があるから」

当然言うでしょう接待する側としては。

 「僕はもう帰ろうか言ったんだけど、
北川もいいからいいからなんて誘うからついのこのこ」

 「帰ってくればいいじゃないって?そうはいかないよ。
ご馳走になっておきながらじゃあはいさようならは出来ないでしょう」

 「まあ銀座にしては大衆的っていうか、クラブじゃなくてスナック?
アジア女性もたくさんいてさ、カラオケで大盛り上がりさ。

僕?勿論歌いますよ。サザンでもキンキでも」

 「ったくしょうがないわね、でも電話くらい出来るでしょ、メールでも」

 「いや、気がついて慌ててしたんだよ、でも地下は繋がらないんだよ、ごめん。」

 「・・・・・・・・・・・・」
「さっさと食べて早く会社行きなさい、遅れるわよ。もーーう」

 こうなればしめたもの、一件落着。
膨らんでいた疑惑度90%は20%に格下げ。

 

言い訳バンクもさるものながら、行く場所大事だね。
まあその人の年にもよるけど、大抵の場合『銀座』って言っておけばまず大丈夫だね。

 女は銀座って言葉に対してはちょっと身構える所があってやや一目置くんだな。

この人銀座で飲んだり、食べたりするんだ。
つまり銀座は高い、高級だって思ってるんだな。

 銀座の夜の女性とはそう簡単に仲良くはなれない、
まあ男として銀座で遊ぶくらいはしょうがないか、と妻は考える。

自分の金にしろ人の金にしろ銀座で遊べる位甲斐性が出来たんだ、と考える。
その裏をかくんだな。

 勿論『言い訳銀行』大事です。色々な定期預金あるにこしたことはない。

 そして
「じゃあ今度私もその店、飛雁閣連れてって  、必ずよ」

安くはない金利を逆に払う羽目になることは覚悟しなくてはならない。

 

 (これはフィクションです。東急さん、飛雁閣さんごめんなさい。)

 ―――なんてね、自分ながらうまく書けた物語だなとは思いますが。

こんなことで、隠し通せる訳がない。
次回は全てを見通すしたたかな女性目線で書いてみます。

 

妄想話 P-1

久々男と女の妄想話を載せてみました。
今度は少々長くても一回で載せられそうです。
そうとう前になりますか、雨の夕方、
止まっている配達車を眺めながら話を膨らませてみました。

 

『優しい男』

あら又来てる。美雪の彼氏が車でお迎えよ。
雨が降ると決まってしかも1時間半もかけて迎えに来てるのよ。
よっぽど惚れてるんだね、ラブラブで羨ましいこと。


 私はこの店――今流行のセレクトショップ、のアルバイト46歳、
主人を事故で亡くして以来一人で子供二人を育ててるけなげな未亡人。

今は休憩に出てるこの店の店長の美雪さん、
40は過ぎているんだけど、若々しくてどう見ても20台後半って感じかな。
女性の私から見てもなかなかチャーミングで明るくて
スリムでも出ている所は出て、メリハリの利いた体をしている.

ショートカットがお似合いで、えくぼが可愛い、人当たりは最高。
彼氏がべた惚れなのも分かる気がする。

一緒に住み始めて4年って言ってたわ。子供はいなくて、籍も入れてはいないらしい。
コンピューター関係の会社を経営している彼氏はバツイチ。

前の奥さんと子供二人には養育費を毎月払っていると言う。彼も大変ね。
でも会社は順調で、最近又関連会社を又一つ立ち上げそれもうまく行っているらしい。

 何でも6年程前、クラス会で既に結婚していた彼と美雪さんが偶然再会。
以来何回も会って食事したり飲んだりしている内に仲良くなってしまい
彼氏奥さん子供と別れて正式離婚、二人で同棲して4年。
雨が降ると今でも車でお迎え、もう30分も待ってるのよ。

 私もあんな彼氏ほしい。夫が仕事中の事故で死亡。
公務員だったので経済的には困らないけど、やはり女手一人で子供を育てていくのは並大抵じゃない。

 結婚―――したいとは思うけど、なかなかいい男っていない。
そうね<優しい人>がいいわ。


 でも<優しい>って何かしら?
ああして遠くからでもいつでも迎えに来てくれる彼、
優しいには違いないけど、でもよく出来るわね。

何かよほど後ろめたい事あったりして。
いやだわ中年女はすぐそういう風に考える、良くない。純粋に彼女が好きなのね。
それで彼女美雪は満足なのかしら?

一緒に暮らして、朝は駅まで送ってくれて、早く帰ったらご飯用意して待っててくれて、
女冥利に尽きるわね。うーらやまし。

でも籍入れないし、子供作らないし、もうじき42よ、彼女子供欲しいって言っていたし、
なんでもっと早くに作らなかったのかしら。

やっぱ別れた奥さんとの子供の事があるのかな?
小学生の男の子、両親の離婚が原因で引きこもりになってしまい登校拒否してるんだって、
それも困るわね。 彼も会ったりして色々話もしてるんだけど、どうもうまく行ってないみたい。

多分に責任感じてるね、俺のせいだってね。
だから子供作って自分達だけ幸せになることに罪悪感?感じてるんだ。
勝手な事しておいて、いまさら別れた子供が心配なんてね。

自分が惚れた女と一緒にいたくて、前の女房とは一方的に別れておいて、
残した子供達とも仲良くしたい、それは無理よ、両方うまく行く訳ないのにね。

別れた女房子供たちに優しくすればする程、美雪に悪いなって思うんだよ。
美雪に優しくするのはその後ろめたさの裏返しなんじゃないかな。

だったら離婚なんかしなきゃいいのに、私だったら愛人でいいわ。
変に気を使って一緒にいてくれても返って迷惑よ、こちらだって気使うじゃない、何かと。

 だったら前の家族の事はキッパリ片付けて、
もう別れたんだから後どうなろうが知った事か、お前らはお前らでうまくやれよ、
と開き直るしかないのよ。


子供たちにとっては十分悪い男になってしまったんだから、
「くっそう、俺たちをこんな辛い目に合わせやがって、自分勝手な奴、お前なんか死んじまえ。」

子供たちから憎まれ恨まれてもそれを甘んじて受け入れる覚悟がなきゃ、
今更物分りの良い優しい父親ぶったってダメダメ.

子供たちだっていずれ分かるわよ、ああ父さんは母さんより好きな人が出来たんだ、
我慢して一緒に住む事より好きな人と居る方を選らんだんだ、だから別れたんだ。
でも僕らのことは考えてなかったんだ。

自分勝手な奴さ、しょうがねえ、たちの悪い親に生まれちまったよ。
でも僕等はお母さんの味方さ、母さんを悲しませる様なことはしないさ、
なんて子供達が考える様になるのをーーーなるかな?
待つしかないさ。

お前らが不幸で居る間自分たちも幸せにはならないよ、て言うのはどうみてもおかしい。
それに付き合わされる美雪がいい迷惑jだよ

自分らが幸せになるために出した結論なんだから幸せにならなきゃダメじゃん。
でなきゃ何で自分たちが犠牲になったのか子供たちにだって分からないでしょ。

望みうる最高に幸せな人生を送りたい、そのためにベストを尽くす、それが当たり前なのに、
適当に妥協して生きるのなんて最低。

 美雪を選んで一緒に暮らす事を決めたんだから、
ちゃんと結婚して、籍も入れ、子供を作ってしっかりした家庭を築いて行くのが筋って言うものじゃない。

 そう言う風に女を引っ張って行くのが<男の優しさ>なんじゃないかな。
車でのお迎えはどうでもいいのよ。

さあーーー私を迎えに来る男はいないし、雨の中一人で帰ろうっと。

そうだ今デパート行けば、惣菜なんか半額よ。
よーし、ヒレカツでも買って、ついでにサラダも。
近くの味噌屋で買った信州白味噌あるから、おいしい味噌汁作ろうっと。


そう最近はばかにフレンチっぽいおかずは作るくせに、
味噌汁はインスタントで済ましちゃうって家庭が増えてるってTVでやっていたけど、
あれはおかしいわね。 まるで逆よ。

味噌汁が作れない主婦なんているの?ばっかじゃない、一番簡単でおいしいんじゃない。

なんつったって日本人は味噌汁よ、体にも良いし直ぐ作れるし、
家なんて味噌汁ないと子供達がっかりするもの。
聞いた話じゃ、最近話題の放射能にも味噌がいいって言うじゃない。

なんだかんだ言っても二人の子供達うまく育ってくれたもの味噌汁のおかげ。
他に大したおかずなくても野菜たっぷり具沢山の味噌汁作ったりすればちょっとしたおかずよ。

合わせみそにして味変えてみたりしてもすると子ども達大喜びよ。
残り物の茄子油で炒めて味噌ちょっと甘くしてかけてみたりもするわ。

なにせ私働いてて忙しいんだから手の込んだ料理なかなか作れないのよね。

 だけど味噌汁は欠かしたことはない、これが愛情よ。
だから子供も素直に育ってくれた。

なまじ気取った横文字の肉やらバターいっぱい使った料理作って、
インスタント味噌汁飲まして平気でいられる主婦の感覚が分からないわね。

だから自分勝手なわがままな子供になっちゃうのよ。
 もーっと若い主婦たちがこれからどんどんおいしい味噌汁作って子供たちに食べさせるようになれば

やさしく、素直で、元気で、頭の良い子が育ち、日本の将来も明るくなるって言うもの。

 あはっ、私ってまるで教育評論家みたい。

 あっ店長帰ってきた、さあ本当に帰ろーっと。

 

 

——–教育評論家と言えば、
最近めっぽう人気の『おぎまま』こと尾木さん
昔からよく店に来て下さいます。

 

 

 

このページの先頭へ

明治30年創業の味噌屋が美味しい味噌とみそ料理を紹介