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みそオヤジの独り言

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トイレの花子さん

去年立ち退きの話が出てやっと収まったと思いきや今年になってまたぞろきな臭い話が出始めて、今度は簡単に終わりそうにないどころかいよいよ立ち退きが本決まりになりそうな雲行きです。なので彼女にもしっかり引導を渡しておかないといけなくなりました。
えっ彼女って誰かって?よく言われるのが花子さん!そうトイレの花子さん。
 
うーん開店して3年くらいかな、まずまずの混み具合、ランチ食べ終わって窓際1卓のお客さんがトイレーー〝とんとん〟すると中から同じ様に〝トントン〟――仕方なく席に戻って『誰か入っているみたい』という会話、あれっもう一人のスタッフはレジにいるし誰も入っている筈ないのに、    そーっとドア引っ張るとーーー開いた!もちろん誰もいない。
お客さんも〝トントン〟の音聞いてるし厨房の私も確かに聞いてました。どういうこっちゃ、誰や。
それから暫くして何日か後、お客さんが帰る際スタッフ皆で『ありがとうございます』、とトイレの中からもくぐもった声で〚あ“りがとぉーうございま”すう〛の声が!――とこれが俗に言うトイレの花子さん!?ーーーでもいい奴じゃない!なんてこともありましたーーホントかよ。
トイレしながら便器に向かって『よーっ元気かっ!』
すると水槽上に置いてあるバスケットがユラユラ、相槌打つ訳ですーーー≪はーいい、元気ですよ≫なんて言っていそうな。これも開店3,4年くらいまでかな。その後はあまり感じなくなりましたて言うか起こらなくなりました。
でも当時二人の霊感の強い女性がはっきり『うんいるわよ』、『それ以上言わないで!いること分かってんだから!』って何故か怒られたりもしました。
そうそうこんな話もあったな。前に働いていたバイトが当時友達と朝一で旅行に行きたい。家からでは間にあわないので前の夜から店に泊まらせてくれって言うんで勿論OK。二人してソファに寝たらしいんだけど後で聞くところによると、夜中にトイレの方向から話し声が聞こえてた。多分隣のスタッフが残業してて話していたんだろうって思ってたらしいんだけど、隣に聞いたら最近は残業どころか8時には皆帰っていたと、てことはその声の主はやっぱハ・ナ・コ!?――バイトには言ってないけど。
最近いる気配ないけど、違う所に行ってるのかも、そのうち帰ってきて≪あれーえトイレがない≫どころか建物自体がなくなっていたらビックリするかも、
とまあこの建物自体木造で70年近くになるらしいので取り壊し止む無しですわ。
一時そう10年も前になりますか、突然天井裏からハネアリの大群が舞い降りてきて大変な騒ぎになりました。マツキヨで防虫スプレー買ってきて撒いたり、はたいたりスタッフ総出でハネアリ退治。残った羽の掃除が(ハネアリは一旦止まると羽が取れて普通のアリになって歩いて動く、取れた羽は軽いからフワフワ舞い上がる)ハンパない。開店時間が2時間遅れました。夏前にきまって3年続きました、穴を全部ビニールで塞いで画びょうで止めたら出なくなりましたーー出ても降りては来れなくなりました。
もっと前なんか、野良猫が天井裏に住み着いちゃって、あったかくて居心地良いんだろうね。そこへ侵入猫!縄張り争いで二匹して大喧嘩、天井中走りまくって店内より天井裏の方が賑やかだったりして、結局天井主が勝ったみたい。――猫と言えば生まれたての子猫が隣の店との境の壁の間に落っこちてしまって助けるのに一苦労――この話はリーフレットにもブログにも載せてあります。
――五年くらい前なんかよりによってハクビシンが入り込んじゃってもうーー動きが猫なんかより激しくて天井抜けるんじゃないか思ったくらい、おまけに火災警報感知器の上にピンポイントでオシッコなんかするもんだから警報鳴り出して消防車が駆けつける騒動にーーーまー後で気が付いたことだけど、最初原因が分からなくてーーホントもうなんとかして!
業者頼んで追い出してもらって直ぐ金網張って、――張り紙も≪猫及びハクビシン等獣類侵入禁止≫――誰が読むかい!
花子さんどころじゃない!なんせ年季の入った木造屋、お化けからハクビシンまで何だって住んじゃうんだから。
何れにせよ自然味!?溢れるこの建物がなくなってしまうのは寂しい限りですがこれも時代の流れで致し方ないでしょう。
間もなくきれいな新しいビルが建って花子さんも快適に?暮らせるんじゃないですか。今んところ年内にも立ち退きが濃厚になってきました。さあボヤボヤしてないで次行くところ探さなきゃ。
どうなることやら、決まりましたらご報告いたします。
 

2020-11-04 18:44:23

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言い訳銀行

―――だんだんブログも佳境に入ってきました。
味噌の話じゃなくて恐縮ですが、以前に書いたもので気に入った話を
そしてリクエストも多く頂きましたので載せてみます。
顰蹙買うのを承知のうえで、、、
もちろんこれはフィクションです!
 
『言い訳銀行』
 
「それで、昨日の夜は何処へ行ってたの?」
 
朝ごはんの用意を済ませると、自分もテーブルに着くなり、
さりげなく発せられた妻の一言に、
後頭部をがつんと真綿で包んだバットで殴られた様な衝撃が走った。
予期せぬ問いかけに、
一瞬目が宙をさまよった。彼女はそれを見逃さなかった。
 
「えっ、うん、あー、そのー」言いよどんでいると畳み掛ける様に、
「だから何処へ誰と行ってたかって聞いてるの!うーうーじゃないでしょ」
 
まずいぞ、これはやばい、知ってるのかな、
会社の後輩の女性と食事して、Hホテルへ行ってたなんて、
こんな事、口が裂けても言えない。
 
何とかうまく言い逃れなくちゃ、
焦ればあせるほど頭の中では色んな地名が大回転で回っている。
 
「渋谷」
いけね、彼女との待ち合わせの場所だ。
 
「へええー渋谷、渋谷の何処?」
 
バカかお前は、大体渋谷なんて40過ぎた男が行く場所じゃない。
これで半信半疑で問いかけた妻の疑惑が一挙に、ソファーの横に転がってる
バランスボールの如く膨れ上がるのである。
 
大体において、妻が夫の動向を尋ねる場合は大まかに三つに分けられる。
一つ目は何も疑ってはいない。只好奇心だけ、疑惑度0.
二番目、然程気にはしていないがひょっとして、疑惑度20%。
三番目、かなり怪しい何でも疑ってかかる、疑惑度75%。
 
一番目二番目はそれほど気にすることもない、ありのまま話せば問題ない。
もしくはさりげなく話題をそらせばいい。
 
注意すべきは三番目の疑惑度75%以上の場合である。
これを疑惑度0にまで限りなく近づけるにはかなりのテクニックが必要となる。
 
肝心なのは嘘をつかないこと、嘘は突っ込まれると必ずぼろが出る。
つまり嘘をつかないで言い訳をする、これが大事。
 
じゃあどうするかって?
先ほどの朝の夫婦の会話に戻ろう。
 
彼女の場合はおそらく日ごろの夫の帰宅時間やら何やらで
少し怪しいと睨んでいたのではないか、すなわち疑惑度50%。
そこへ来て『渋谷』なんて言うもんだから一挙に90%にまで膨れあがったのである。
これからどうするかって?
 
まあ言ってしまったのはしようがない。『渋谷』から始めましょうか。
 
「うん渋谷、取引先の若いのが今度渋谷フードショウに出来た新しい店見たい、
そう東急の、って言うんで、そこで待ち合わせして、
とりあえず見て、ちょっと試食もしてみたんだよ、
そしたらさ、仕掛けは良いんだけど、味がイマイチってとこか。」
 
「そりゃあ勿論味噌料理に関しちゃあお前とも行った吉祥寺の
あの店の方がダントツさ、それにそこは渋谷にしては値段が高い。」
 
「そうこうしていたら、その会社の部長の、ほらよくゴルフ一緒に行っていただろ、
北川さ、彼から携帯入って、今から銀座で飯食うから一緒に来いって言うんで、
ええっーと思ったんだけど、とにかく行った訳だ。」
 
「勿論その若い方のかれも一緒さ、まあ北川とも久しぶりだったし、
そうしたらなんと、接待の席じゃない、もちろんされる側。」
 
「そう銀座の飛雁閣なんったら大した店じゃん。僕なんかが行って邪魔にならない、
聞いたんだけど、大丈夫大丈夫気安い相手だからなんて言うから、
ご馳走になったんだけど、名刺もあんまし持ち合わせがなくて参ったよ」
 
話が込み入ってるけど、込み入ってる方が良いのです。
そしてそれを出来る限り具体的に話す、
つまり女性に想像力を働かせちゃ駄目なんだよ。
 
そしてここで重要なのは、この話が嘘じゃないこと、本当にあった事、
本当に過去に接待の席にのこのこ着いて行った時の事、
 
ただし昨日じゃない。
 
何日か何週か前に実際にあったこと。それをそのまま何も隠すことはない、
何のやましいこともない時の事、これをありのまま喋ればいいのです。
 
後ろめたい昨夜の事ではなく、何のやましい事もない時の話だから、
すらすら話せるでしょう。そして自分もその時の気分に入り込んじゃうのよ。
そうすれば奥さんだって信じ込むって訳よ。
 
これが私の言うところの《言い訳銀行預金》
過去に行ったことのある、それでいてかみさんには話してない所、
そしてその状況、誰とどうしてどうなったか、なぜ遅くなったか、
を《記憶の定期預金》として持っておくこと。これが大事。
 
夫婦だからといって何から何まで全てその日にあったことを洗いざらい喋ることはない。
あっこれは使えると思えば話さないでそっと記憶にしまっておけば良い
《しめしめこれで定期預金がまた増えた》。
そして今度それを引き出したら、ちょっとその内容を膨らませて話せばいい。
聞いていても楽しい様に、これが思いやり。
 
ちょっと話は反れるが、よく言われるのが、夫婦だから何でも話すのが大事。
楽しいこと、辛いこと何でも二人で話し合えば、楽しさも二倍になるってね。
だけど辛い事、嫌なことも二倍になるんだよ。
二人で分かち合えば辛い事は半分ずつ、これは嘘。
 
どうして一人の辛さを他人に背負わせるのか?
嫌なことは自分だけで我慢すればいいじゃないか。
かみさんとはいえ人にまで嫌な気分にさせる事はない。
 
話が横道に逸れたけど、さてと仕上げ。
いくらがんがん飲んで食べても、中華じゃいいとこ11時でしょ。
妻は言うでしょう「だったらそこでさっさと帰ってくればいいじゃない。」
だけどそうは行かないのが男の社会。
 
「せっかく北川さんとお食事できたんだから、もう一軒、行きましょう、
歩いて行かれる所に馴染みの店があるから」
当然言うでしょう接待する側としては。
 
「僕はもう帰ろうか言ったんだけど、
北川もいいからいいからなんて誘うからついのこのこ」
 
「帰ってくればいいじゃないって?そうはいかないよ。
ご馳走になっておきながらじゃあはいさようならは出来ないでしょう」
 
「まあ銀座にしては大衆的っていうか、クラブじゃなくてスナック?
色んな国の女性もたくさんいてさ、カラオケで大盛り上がりさ。
僕?勿論歌いますよ。サザンでもキンキでも」
 
「ったくしょうがないわね、でも電話くらい出来るでしょ、メールでも」
 
「いや、気がついて慌ててしたんだよ、でも地下は繋がらないんだよ、ごめん。」
 
「・・・・・・・・・・・・」
「さっさと食べて早く会社行きなさい、遅れるわよ。もーーう」
 
こうなればしめたもの、一件落着。
膨らんでいた疑惑度90%は20%に格下げ。
 
言い訳バンクもさるものながら、行く場所大事だね。
まあその人の年にもよるけど、大抵の場合『銀座』って言っておけばまず大丈夫だね。
 
女性は銀座って言葉に対してはちょっと身構える所があってやや一目置くんだな。
この人銀座で飲んだり、食べたりするんだ。
つまり銀座は高い、高級だって思ってるんだな。
 
銀座の夜の女性とはそう簡単に仲良くはなれない、
まあ男として銀座で遊ぶくらいはしょうがないか、と妻は考える。
自分の金にしろ人の金にしろ銀座で遊べる位甲斐性が出来たんだ、と考える。
その裏をかくんだな。
 
勿論『言い訳銀行』大事です。色々な定期預金あるにこしたことはない。
 
そして
「じゃあ今度私もその店、飛雁閣連れてって、必ずよ」
安くはない金利を逆に払う羽目になることは覚悟しなくてはならない。
 
 
(これはフィクションです。北川さん、東急さん、飛雁閣さんごめんなさい。)
 
―――なんてね、自分ながらうまく書けた物語だなとは思いますが、
こんなことで、隠し通せる訳がない。
今度機会がありましたら、強かな女性目線で再度検証してみましょう。
 
 
 

2020-08-22 14:47:05

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言い訳銀行 続き~

何が女に想像力を働かせちゃダメなのよ、
よく言うわよ。
想像しなくって分かるわよ。
だいたい聞きもしないのに北川さんとどうのこうの、
吉祥寺の店が旨いだの、
朝の出勤前の時間もないのによく喋るわねって感心してたの。
アンタは政治家じゃないんだから舌先三寸で人を丸め込もうなんて
百年早いわよ!
だいたい「どこ行ってたの?」で「うっ!」って顔してたでしょ、
あれで全てが解るの!ははーんそういう事ね!
後で何をごちゃごちゃ言っても聞いちゃいないわよ。
何年夫婦やってると思ってるのよ。
最近やたら帰り遅いし、出かけにシャツあれこれ選らんだり、
妙に小ざっぱりした恰好して行くし、
こりゃあ何かあると思わない方がおかしいでしょう。
そんなにモテるとは思わないけど、
結構面倒見いいし、色々気使いしいだし、まあマメ、
まー若い子なら引っかかるんじゃないの。
行ったこともない高級レストランだったり大人のバーなんか連れてって
「今夜はもっと君といたい」なんて言うんでしょう。
ったく男って単純よね。
でもそれでのこのこ着いて行っちゃう女の子も女の子、気を付けなさい。
まーーその子にどんだけお金使ったか知らないけど
とりあえず今度の休み銀座でバッグ買ってもらおうかな、シャネルの
あとジミーチュウの靴もいいかな。
前から欲しかったんだ、もちろんイヤとは言わせない、
そんな一回の食事でチャラにしようなんて虫が良すぎるわよ!
これから先も続ける気ならそれなり覚悟することね、
本気で怒らせたらワタシ何するか分からないから!
 
―――とまあ一刀両断でバッサリ!怖っ、女性の方が一枚も二枚も上手、
こいつは一生尻に敷かれっぱなし間違いない。
 

2020-08-22 14:45:21

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花火ソンエルミエール

今年の夏はコロナの影響で全部の花火大会が中止になってしまいました。
寂しい限りです。
サラリーマンの頃ちょっと変わった花火大会に遭遇しました。
それを又載せてみます。
 
≪ソンエルミエール花火大会≫
 
―――夏休み真っ最中記録的な暑さが続きますが、
今年も全国で夏の風物詩とも言える≪花火大会≫が各地で催されました。
 
〝間断の音なき空に星花火〟
 
私の大好きだった女優『夏目雅子』の代表とも言える俳句です。
都会で見る今の花火は人が多すぎて、それに星空はほとんど見えないので
この歌の風情は感じられません。
 
小さい頃、私の町でも花火大会がありました。
海岸沿いに大して大きくもないんですが打ち上げられました。
花火を見に行ったものの、その音が怖くて
耳を手で覆いながら空を見上げていました。
 
花火が出てない時、見上げれば満天の星でした――――まさに星の花火。
怖がっていると思われたくないので、
「ほら、あれが北斗七星その先が北極星だよ」
なんて関係ないことを弟に教えていました―――遠い昔の記憶。
花火で思い出した事がもう一つありあます。
 
もう30年以上も前のこと。
まだサラリーマンで三越で働いていた時です。
当時夏には三越が主催する≪ソンエルミエール≫花火大会がありました。
南軽井沢レイクニュータウン―――三越の開発した別荘地―――
で行われる花火大会です。
 
周りを山で囲まれた高原の湖が舞台です。
そこの水上にステージが設けられ、曲が演奏され歌も。
その音楽に合わせて花火が打ち上げられます。
と同時に山の中腹から湖に向かってレーザー光線が放たれます。
―――花火の間は別荘に頼んで灯りを消してもらっていたそうです。
 
例えば<ジュディオング>が≪♪ Wind is blowing from the Agean 女は海≫
と羽の付いた衣装で歌い上げるとそれに合わせて花火、
曲のクライマックスには仕掛け花火やレーザー光線がここぞとばかりに放たれ
 
それは、花火に関しては長良川なんかで結構大きなのを見ていて
「へっ、所詮子どもだましみたいな山奥のちぃっちゃな花火なんて」と馬鹿にしていたら、
 
なんとその眩さ、スペクタクル、優雅さに圧倒。
まさに鳥肌ものです。
ただ何千何万のそして大きな花火に圧倒されるんじゃなくて、
軽井沢の自然の中、その地の利を生かした、
音と光の織り成す一大ショー、ページェント――そうまさにエンターテイメント、
オーバーですが芸術です。
曲に合わせて仕掛け花火が湖を走ったり、打ち上げ花火がまとめて上がったり。
レーザー光線が思いっきりのアクセントになってまるで夢の世界です。
 
30年たってもあんな花火一度もありません。
今も全国で打ち上げ花火の数と大きさそして新しい技術で競い合っていますが、
このような自然を生かした演出の花火大会はお目にかかったことはありません。
 
それを30年も前にプロデュースした三越―――岡田社長には頭が下がります。
そして帰り道、
車で国道まで出る道には
10m間隔で三越社員が並んでペンライトを振ってお見送り。
至れり尽くせりの花火大会です。
 
そうあの頃の三越のパワーは何処に行ってしまったのでしょう。
 
―――今度かつて全盛期の三越の裏話を書いてみます。
 

2020-08-07 09:36:48

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雉撃ち

『雉撃ち』
(草むらでしゃがんで用を足す格好が似ているので付けられた山言葉)
 
うん、さっき夕食に食べた赤出し味噌汁、インスタントにしてはうまかったな。
「ちょっと食後にキジでも撃ってくるよ。」連れの男にそう言うと、
テントサイトから縦走路に入ると直ぐ道をそれ、左の藪の中へ入って行った。
膝位の笹の中を適当な場所を探しながら、
そう言えば今日の昼、縦走路脇の小さな無人の山小屋に寄った時、
登山者ノートが置いてあって、昨日の日付けで
<今日縦走路でオヤジを見かけた、気をつけた方がいい。>
と書いてあったのを思い出した。オヤジとは熊のことである。
 
10月に入っての連休、友達と二人、南アルプスの
甲斐駒、仙丈ケ岳の縦走の山登りに来ていた。
紅葉は盛りを過ぎてその葉を落とし3000メーター級のアルプスは
冬の準備にかかっていた。
熊も冬篭りの準備で人道にも餌を探しに現れたらしい。
 
やだね、こんな所で熊ちゃんとバッタリなんて、ビックリなんてもんじゃないよ、
ドッキリ、ギックリだよ。イヤイヤ早く済ませて帰ろ。
わざと陽気なフリをして登山靴の先で適当な穴を掘るとズボンのチャックを下ろした。
 
急いで用を済ませて、ズボンを上げようとしたその時、
10メートル位か後ろで、ガサガサっと藪の中を歩く物音。
ドッキ!さては昨日の熊、現れたか。
恐怖てのあこんなものか、全身の毛が逆立つとはこういうことか、
眞に頭のてっぺんからつま先まで、
体中の毛という毛が全てビンビンに立った感じ。
ズボン上げる間もなく振り向いた。
 
ガサガサガサ、身の丈2メートルはあろうか、
カッと真っ赤な大口を開けた月の輪熊が
両手をあげ直ぐ後ろに仁王立ちでこちらに向かって来るではないか。
 
と思いきや、人だ。
頭からウインドヤッケをすっぽり被りゴーグルをして手にはミトン、
リュックのサイドにはピッケルが差してある。
あんぐり口を開けたまま、「あっ、どうも。」慌ててズボンを引き上げた。
相手はこちらを見るふうでもなく、知らん顔で
バサバサ藪の中を尾根沿いに下の方へ降りて行った。
 
なんだ人だよ、人間だよ、びっくりさせやがって。
心臓が口から飛び出しちゃうかと思ったよ。
しかしなんだよあいつ、人が挨拶してるのに知らん顔で、失敬な。
でもなにか、歩いてていきなし人が糞してるの見ちゃったら、俺でも知らん顔するか、
それもそうだな、ま、熊でなくて良かったよ。でも足はまだ震えていた。
現物と紙を丹念に靴のかかとで埋めてしまうと、もと来た道を下りた。
 
相棒はもう寝る準備をしていた。すぐに聞いてみた。
「さっき登山者が一人下りて来ただろう?
やたら厳重な格好した奴。」
相手は怪訝そうな顔で、「誰も来ないよ、ずーっとテントの外で
エアマットの空気漏れを調べていたけど、
誰か通れば必ず分かるはず、誰も通ってないよ。」
おっかしいな、あのまま真っ直ぐ下へ来れば必ず我々のテントの横を通る筈なのに、
横へ反れたかな。相棒が聞いた、「どんな格好してた?何が厳重だよ」
 
「ほら、ゴーグルしてて目出帽の上にウインドヤッケかぶって、まさに冬山よ。」
冬山って言ったとたん、〝はっ〟と、
ひょっとしてもしかして以前新聞で読んだことのある、
冬山の遭難者、の霊?お化け?
ウソっうっひょっ、
背中にぞーっと冷たいものが、だめだ、又足が震えてきた。
「おい、早く寝よ、しっかりテント閉めて!」
 
 
―――ほんと、山は人がいるから怖いのかいないから怖いのかよく分かりません。
 
こんなことも
在学中夏の終わり頃、テント背負って一人東北を旅したことがありました。
岩手山に登ってみようと麓の雫石と言う所
――当時ちょっと前飛行機事故があった場所で
人も何人か亡くなったと記憶してるんですが、
―――にやって来ました。
国民休暇村にバンガロー場があると言うのでそこにテント張って泊ることに、
普段ならグループ連れ、家族連れで賑わっていたんでしょうが、
シーズンオフとあってか誰一人いません。
何十のバンガローがありますが私以外人っ子ひとりいません!
ゴーっという森のさんざめき水場のピチャピチャ他は何の音もありません。
晩ご飯簡単に済ませ早々と寝ることに、
どうもいつもみたいには寝付かれなくて、
なんかいるのかなあ、テントから首を出して眺めていた時
――と突然2,30メートル向こうの黒々したバンガローのドアが
音もなくふわーっと開いた次の瞬間
白い影がスー―っと動いて
うそっ、だ誰っ、こっこっち来ないで!
――と、ふっと消えました、ーーーむろん誰もいやしないーー、
いやあー怖いの何の、頭から寝袋被って寝ました。
まー目の錯覚でしょうが、否確かに見たと、、、―――よくある話。
 
――――今はとてもそんな一人で山ん中テントで寝るなんて無理無理!
 
―――そんなことがあっても大学4年の終わり私の卒業旅行は
やはりテント寝袋担いでの南九州一人旅でした。
機会がありましたらその話も披露したいと思います。――昔の話はもういいか?!
 

2020-08-03 09:15:06

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エピソードー2(生本番)

エピソードー2《ゴマクリームソース》
 
「土平さん、どーして、そこでお砂糖入れるの?」
「・・・・・・・・・」
<うっそーっそんな質問するなんてカメリハでは一言もなかったぞーー>
 
何年か前、たしかTBSのスタジオで昼の生番組放送中、
当店人気の『ゴマクリームソース』を実演で作っている時
MCのうつみ宮土理さんがいきなり聞いて来ました。
 
<どーして、って言われたって、おいしいから、に決まってんじゃねーか>
―――そんなこと言えないし、
 
「もちろん、甘い西京味噌入れてもいいんですが、やや味がボケます」
「ここはやっぱ砂糖の方が味がはっきりしておいしいです!」
 
<―――よく言ったよ、生本番でいきなり訳分からんこと聞かれて、
すぐにスラスラ出てくるなんて、大したものじゃない>思わず自画自賛。
 
なんだかんだで『ゴマクリームソース』が出来ました。
 
うつみさん試食して、
「ほんとやっぱりおいしい、味が決まってるわーぁ!」
さすがプロ、ナイスフォロー。
 
 
 
しかし生番組は疲れる。
 
この放送中にはまだ冷や汗ものがありまして、、、、、
 
て言うのはまず番組のセットの袖でスタンバってたのですが
何時出たらいいのか分からない!
するとレギュラーだったヨネスケ師匠が「早く出てこないと終わっちゃうよ」
と袖引っ張って出してくれました。ヤレヤレ
そしていよいよゴマクリームソースを作る時が来ました。
先ずゴマを炒ります。
リハーサルでは厚さが5mmもある鍋も温まっていたのでゴマを入れてコンロに
架けると直ぐにパチパチってゴマがはじけて炒れたのですが
本番中コンロ消してあったので鍋がすっかり冷えていました。
5mmもあるので火を入れてもそう直ぐには熱くなりません!
いくら鍋振ってもウンともスンともいいません、やっぱ堪りかねたヨネスケさんが
「土平さん、早くしないと番組終わっちゃうよ!」
――「ハイ、急ぎましょう、とこれが炒りあがったゴマです、」用意してあった
炒り上がりのゴマを出して
「指で潰してみるとこんな色になるまで炒って下さい」
――口では段取り通りみたいに言っていますが、もう心臓ドキドキッ!!
「これを当たりバチで細かくなるまで擦って下さい」ーーー擦り上がったゴマを取り出して
「さあこれに味噌とお砂糖、」って言った瞬間
冒頭のMCのどうしてお砂糖入れるの?発言
間髪を入れず甘い西京みそだと、と言えたのもうん上出来上出来!
 
―――最近ではテレビ東京の生番組でゲストの太川陽介さんにいきなり
「土平さん、家のかみさん自分で手造り味噌作ってんだけどこの頃
汁が上がって来ちゃったって言うんだけど大丈夫なの?」
そうなんですよ、カメリハには未だ来てなくてディレクターが代わりにやってたんですよ、
もちろんそんな質問しないし、
―――だいじょうぶ大丈夫また直ぐ下がって行くから問題ありません!
そうなんです、私も手造りみそ作ったことあります、仕込んで暫くすると
茶色の液が上がってきます、放っておけば引いていきます。
経験済み!
―――知らなかったら、どうしましょ!?
と考えると冷や汗!
なんとか生本番事もなく通り抜けてきましたけど、後で考えると
「ったくもう!」ですね。
 
 
 

2020-07-29 21:36:33

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ポトフ

先日10月6日(水)午後5時からのテレビ朝日『スーパーJチャンネル』の番組
吉祥寺のグルメスポットを紹介するコーナーのなかで当『ソイビーンファーム』が
放送されました。
レポーターはフランス人男性のアランとイラン人女性のサヘルの二人です(敬称略)。
放送時間は2分位ですか、他の店に比べれば比較的長かった方ですが、
実はサヘルのレポートした『牛肉と大根のポトフ』がすっかり抜けていました。
せっかくサヘルがとてもタイムリーなコメントを言っていたのに全部カットで
残念です。
 
それは、こんな感じです。
当店の人気メニューのひとつに『ことこと煮込んだ牛肉と大根のポトフ』があります。
牛肉を一口大に切って、ニンニクとバターで炒めてから赤ワインと一緒に煮ます、
あくを取ったら玄米味噌を加えてさらに4時間煮込み柔らかくなったら大根、玉ねぎ、人参を加えてさらに3時間、大根が透明になりスープにうまみと甘さがでるまで煮込みます。
それにジャガイモ、しめじ、ブロッコリを加え、味噌味を整えて出す訳です。
 
「これってどんな料理ですか?」サヘルの質問に答えて、
 
「味噌ベースではあるんですが、あえて味噌はあまり主張しないで、
中に入っている具材の持ち味を生かしてやる。」
「牛肉の柔らかさ旨み、大根、玉ねぎの甘さ、他人参じゃがいもシメジの味、食感を
引き出してやる。味噌の味にワインの風味、肉のうまみに大根の甘さが加わったスープ、
そしてそれら全てをうまく調和させてひとつの料理として素材のハーモニーを楽しんで頂く。」
 
「ん、これが味噌か!って思わず顔が吸い込まれそうになる。」
「これが当店の目指すところのポトフなんですよ。」
と言ったら
 
サヘルが間髪を入れず
「それってまるで日本人そのものじゃないですか。」
って返すもんだから、思わず「うまいっ」って拍手してしまいました。
 
ちょうど中国と尖閣諸島問題でガタガタしていた時だけに
このレポーターただものじゃない!
 
これが放送されれば面白いのに―――――― 、残念でした。
 
もちろん、ロールキャベツのゴマ&ワインソースだけで時間いっぱい。
とても『ポトフ』まで入れる時間がなかっただけのことでしょうが、
気合を入れてしゃべっただけにがっかりです。
 
――――この後管さんが総理大臣になられたのかな、この時の冬のセールの挨拶文が好評頂きました。
 
 
―――これが平成22年の話です。ここにその冬セールの挨拶文を載せておきます。
この時3名のお客様からこの挨拶文が欲しいと言われました。これ以来セールの挨拶文を書くのに2週間以上かかる様になりました。
 今日のニュースによりますと又日本も中国とトランプ大統領の5G(ハーウェイ?)争いに巻き込まれそうで困ったもんです。
 

2020-07-21 08:33:39

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平成22年冬セール挨拶

暑くて暑くてどうしようもない日々が続いたと思ったら、いきなり木枯らし1号。
あっと言う間に冬です。
皆様お元気ですか、いつも何時もソイビーンファームご利用戴き誠にありがとうございます。
 
地元出身の菅さん総理大臣になっても、中国やらロシアやらにやたら揺さぶられ放しでもう大変、がんばって欲しいものです。
 
前にブログでも書きましたが、日本と言う国はまさに味噌です。
長い伝統と歴史、独自の文化を持ちながら、
味噌汁の様に、その味と香りを充分出して、自分をしっかり主張する一品があると思えば、
当店の料理のポトフの様に、牛肉、大根、玉ねぎ、人参、じゃがいも、キノコ等など夫々の具の持ち味を活かし、自分はあまり主張しないで他の材料の美味しさを際立たせてやる。料理全体のバランスを整え調和を持たせる。
しかし味を調えるだけじゃない、味噌と言うこの上なく栄養価の高い健康に良い性格(高度な技術と繊細な心)を活かし料理をグレードアップしこの上ない美味しいそして優しい一品(平和な世界)に仕上げてくれる、
まさしく日本その物じゃないですか。
やたら大きいだけが取り柄のお隣さん達みたいに、俺が俺が、と言う時代は終わってんだよって、言っておやんなさい、菅さん。
 
なんて今回はオーバーな書き出しになってしまいましたが、
要は24th ANNIVERSARYのお知らせです。
 主張する料理も協調する料理も自由自在な30種類の味噌から、お好きな味噌を
お選び下さい。どれもこれもお買い得です。
お歳暮も各種用意しました。
皆様のご利用お待ちしています。
 
余談ですが今月始め、吉祥寺パルコ開店30周年記念キャンペーンで
ソイビーンファームの味噌が300個プレゼントされました。おかげさまで大好評でした。
 
平成22年11月
 
お客様各位                    
                                   吉祥寺SOYBEAN FARM
 

2020-07-21 08:32:07

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鼻毛の抜き方

『鼻毛の抜き方』
 
台風で大した仕事がなく本棚の整理をしていて見つけました。
 
『1973年における東京のヤング1973人の発言』
この年デパートの東京大丸が主催、平凡出版(現在のマガジンハウス)毎日新聞、
そして電通が協賛して行われたオピニオン募集です。
 
毎日新聞一面にデカデカと広告が出されて、入賞者10名パリ10日間の旅ご招待。
つまり何項目かのテーマの中の一つを選んでそれに対する意見発言を
葉書一枚に、文章でもイラストでも書いて出せば、
パリに行けると。
 
そのテーマとは、

  • 日本列島を考える
  • 生きる価値
  • セックス
  • 映画、テレビ、音楽
  • 情緒の発見
  • ファッション
  • 遊び
  • 私にとっての東京
  • ノンセクション
でした。
その頃はまだ、<地球を考える>は無かったみたいです。
当然私は、農学部出身ですから、①これからの日本の農業について書きました。
ちゃんと下書きまでして、
でももう一枚⑩当時何となく浮かんだ事を思いつくまま書いてみました。
葉書に一杯になり書き切れないので矢印で引っ張り横にして、
まあぐちゃぐちゃな感じで、
でもまいいかと二枚ポストに出しました。
 
そんなことはすっかり忘れて仕事で甲府に行っていた時、
宿に突然、かみさんから電話(その年に結婚していました)。
「あたった、当たった。新聞に出てる、パリよパリ」
「何が?」
「ほらいつか書いて出したでしょ、懸賞論文、鼻毛、鼻毛」
「あーーーあの毎日新聞の、そりゃ当たったじゃなく入選だろ!」
 
てな訳でいい加減?な気持ちで書いた方が入選してしまいました。
 
後日その1973人分の作品が載った本が平凡出版から出されて
うちにも一冊本棚に置きっ放しになっていたのです。
なんと36年前の若者の意見です。
 
そのパリ行き入選者10人の作品のトップに私の文章が掲載されています。
それをここに移してみます。
 
 
『鼻毛の抜き方』土平哲生
 
 たとえば、国立の病院へ歯の治療に行った時とか、なかなかやって来ないバスを
待っている時とか、ふとその時間をもて遊んでいる時、なんとなく鼻がムズムズする
ことがあるでしょう。
 
 この頃は排気ガスやらスモッグやらで、空気が汚れているせいでしょう、
鼻毛がやたらのびるのです。
 
外からフッとつまんでみても5,6本長いのがつかめるんですよ。
そこで、そのなかで太そうなのを一本、爪でつかんで、息を殺してムッと、
力いっぱいひっぱるのです。
 
うまくいけば、長くて太くておまけに根まで黒いのが抜けてきます。
そんなときは自分でも痛いのも気にならずそれに見とれるくらいです。
すぐ捨てるのは惜しくて、てのひらにくっつけてみたり、爪先でくるくる回して
みたり、それは楽しいものです。
 
 しかし、途中で切れたり、抜けそこなったりしたら、痛いものです。
思わず涙がでます。
それを防ぐためには、しっかりと毛がつまめるよう、
爪先の断面を平らにしておくことです。
もうひとつ注意することは、鼻の奥の方の古そうなのを抜くことです。
まちがっても、つかみやすいからといって、入口のところの、あまり太くない
若いやつを抜かないことです。
これは、抜けても抜けなくても痛いことこのうえありません。
 
はたから見れば、汚らしいというか、いやらしいというか、
あまりいい図ではないことは確かです。
 
しかし歯を抜かれるのを待っていたり、バスを待っているとき、なんとなく
鼻がムズムズするのはなぜでしょう。
(東京都大田区北馬込1-2-2-202 25才会社員)
 
 
 
なんともまあ他愛もない文章でしょう。
これで7000通以上の中から選ばれたなんて、
おそらく⑩ノンセクションにはろくな物が無かったに違いありません。
 
でも選考委員には、石川弘義氏、永六輔さん、落合恵子さん、今野雄二氏
小林康彦さん、サトウサンペイさん等、当時錚錚たるメンバーです。
 
パリ10日間の旅にはちょうど男5名女5名が選ばれました。
25歳の私が一番の年長です。
翌年1974年5月に連れて行ってもらいました。
もちろん私にとって最初の海外旅行です。
いずれ機会がありましたら、当時と今の海外旅行について比べてみても
いいかと思います。(なんと羽田発です)
 
余談ですが、その10名の中の一人に
現在大活躍中の作家、林真理子さんがいらっしゃいました(当時大学生)。
 
 
――――とまあこれが文章を書くきっかけになった最初だったかも知れません。
 
 

2020-07-20 09:25:43

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携帯のない時の口説き方

『携帯電話のない時のデートの約束』
 
今は誰しも携帯電話(もうスマホかな)持っていて、
簡単に何処でも誰とでもそしていつでも連絡取り合うことが出来、
全くもって便利になったものです。
 
でも今から37年くらい前、そんな便利な物はありません。
全てが仕事場、自宅そして公衆電話と言う固定された電話機からしか
連絡は取れませんでした。
でも当時はそれが当たり前で何の不自由さも感じませんでした。例えばこんなことも。
 
 「ようごくろうさん、仕事がんばってるみたいだな、味噌の売り上げも伸びてるし、
たまには一緒に昼飯でも食うか?」
デパートで使っているアルバイト学生に声掛けた。
 
「やったあ、ありがとうございます。それから、売り場は違うんですけど、
知ってる子いるんで連れてっていいですか?」
「いいよ。じゃあこの前行ったことある中華料理屋に先行ってるから、後で来いよ。」
 
 バイトが連れてきた子はなかなかかわいい子、
デパートで働くだけあって受け答えもしっかりしていて、愛想もいい。頭も良さそう。
「かわいい子じゃないか、彼女?」
「いえ、違います。同じ大学なだけです。彼女洋菓子売り場にいるんです。
一度おみやげにでもチョコかクッキー買ってやってください。」
 
 それぞれランチ定食を頼んで、他愛も無い事喋りながら一時間が過ぎ、
バイトがトイレに行っている時、誘ってみた。
 
「今日仕事は何時に終わるの?もし暇なら晩御飯でも食べようか?」
「えっ語馳走してくれるんですか、嬉しい!はい大丈夫です。早番ですから5時です。」
意外とすんなりOK
「じゃあ後で売り場に電話入れるよ。」
「お願いします。」
 
今ならアドレス聞いて、「じゃあとで携帯にメール入れておくから。」もしくはライン、で終了。
でも当時そうは行かない。
公衆電話へ行ってまず、お目当てのレストランに電話。
今晩の予約が取れるかを確認する。首尾よく取れました。
 
今度は彼女の働くデパートの代表番号に電話、
「地下食品の洋菓子売り場お願いします」
交換女性が言う、《お電話お回しします、そのままお待ち下さい。》
 
そして《お電話ありがとうございます、地下食品洋菓子売り場担当小山と申します》
「恐れ入ります、バイトの中田さんお願いします。」
《少々お待ち下さい。》
 
デパート食品売り場女子社員小山さん受話器を右手の平で押さえると、
《中田さん、電話》
“私用電話はダメって言ってあるでしょ、”
言いたげに、にらめつける様に、受話器を渡す。
 
《はい、お電話代わりました、中田です。》
「あー、もしもし先ほどの味噌屋です。」
《はい、どうも先ほどは、ありがとうございました。》
「予約取れました。時間7時で大丈夫ですか?」
《はい大丈夫ですが場所は?》
「7時に地下鉄広尾駅でどうですか?
出口が2箇所ありますから六本木に近い方の出口
改札出た辺りで待ってます。分かりますか?」
 
“ひょっとしてデートの打ち合わせ?
ったくしようがないわね、これだから若い子はイヤよ、〟
〝仕事用の電話でいちゃいちゃ。ちょっと可愛いとこれだよ、〟
〝注文の電話が入ったらどうすんの、仕事にならないじゃないの、早く切りなよ”
 
年配女子社員の小山さん、ちょっとばかりおかんむり。それを察してか、バイトの中田さん、
《はい、分かります、》ちょっと合間を置いて
《じゃあ、その見積の件につきましては当社係長が戻りましたら、
その旨伝えておきます、ありがとうございました。失礼します。》
 
なんて言うもんだから、への字になっていた小山さんの顔、
なんだ仕事の話か、じゃあしょうがないか、なんて元の笑顔に戻るという訳。
 
公衆電話の受話器を戻しながら、この子やっぱなかなか頭いいんじゃない、
そう思いながら今日のデートがより楽しみになったりして。
 
電話の使い方、応対の仕方、周りへの気配り、今の携帯ではとてもできない、
考えられないちょっと奥深いものがあったりして、
それはそれなりに面白い所がありました。
 
―――携帯が当たり前の今こんな内容想像もつかないでしょう!
サラリーマン時代にニヤニヤしながら書いた文章でした。
 
 

2020-07-14 08:27:46

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