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『新宿のデパートで』

『新宿のデパートで』

「あれっ、うそ、こんな所に出来たんだ。」
知らないうちに、子供の手を引いて、カウンター席に座っていた。
1週間後に控えた、子供の小学校受験に備えて、新しいジャケットとパンツ、
ついでに私のブラウスもと、新宿のデパートに寄った帰り、
買い忘れたパンを求めて駅に近いこのMデパートの食品売り場に足を踏み入れた。
今日もそう、何かに追われているような毎日。

なかなか子供に合うジャケットがなくて、つい時間が過ぎてしまった。
午後は塾がある。それに遅れないよう帰らなくては。しかし疲れた。
食事もできるんだ。そうだここで昼ご飯食べて行こう。
ちょっと高めの椅子に座って、子供は珍しそうにきょろきょろしている。

そう、もう10年になる、忘れもしないこの大豆をあしらったロゴマーク。
学生の頃ほんとよく食事に入った。味噌も買った。
最初は田舎の母が上京して、吉祥寺だったら、最近テレビで見たお店がある、
とか言って私を連れて行ってくれたのが始まりだった。

オリジナリティー溢れる素材重視の味噌料理が気に入って、4年間通い続けた。
サークルの<追い出し>もここでやって結構好評だった。
その店の支店がこのデパートにも出来ていた。

卒業、就職、恋愛、結婚、出産、育児、そしてお受験。
お決まりのコースを駆け足でやってきたって感じで、なんとなく息が切れてきた。
まだこれから越さなきゃならないハードルは延々と続く。

それに最近子供がご飯をあまり食べなくなったのも気がかり。
「あなたの体のためを考えて、頭がよくなるように、元気でるように、
ママがんばって作ってるのよ。ちゃんと食べてよ。」
「うん、でもあまり食べたくない。」昨日の夜も残してしまった。

  そうだ注文しなきゃ。「ロールキャベツのゴマクリームソース下さい。」
「はい、ありがとうございます。すぐご用意します。」元気な声が返ってきた。
「この、ロールキャベツね、ママが学生の頃大好きでよく食べたのよ。」
「おまちどう様、ごゆっくりどうぞ。」
そうそう、これこれ。あはっ、やっぱおいしい。懐かしい、この味。

「僕も食べる。」珍しくこの子が自分から食べるって言った。
「どう、おいしい?」
「うん、ママも好きだったんだろ。やっぱうまいよ。」
あっという間に一皿食べてしまった。「すみません。あと一人前下さい。」

一生懸命栄養のバランス、カロリー考えて、この子のためばかり考えて、
それが逆に食事を押し付けて来てしまったのかも、ふっとそんな気がした。
自分の食べたいものより、子供の好きなもの。夫の好物より、子供の栄養バランス。
この頃夫の帰りが遅く、家で食べなくなった。飲んで帰ることも多い。
それでか何となく、夫婦の関係もぎくしゃくし始めた。
そっかー、この子なりにプレッシャーみたいなもの感じていたんだ。

もういいや自分の好きなもの作ろう、夫の酒の肴作ってやろう。
そうだよ、これでも私の人生の一部だもの。私は私、子供は子供。
なんか、肩の荷が下りた様な、目の前が明るくなったような、そんな気がした。
「ねえねえ、塾さぼって、どっか遊びにいこうか?」
一瞬怪訝そうな目をしたが、次の瞬間輝いた。
「うん、ディズニーシー行きたい!!」

うふっ、味噌少し買って行ってロールキャベツ作ろう。
よし、夫の携帯にメール入れてやろう。
<おーい、今日はロールキャベツのみそスープだぞ、早く帰っておいで>
 

2020-07-03 10:16:24

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