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鼻毛の抜き方

鼻毛の抜き方

『鼻毛の抜き方』
 
台風で大した仕事がなく本棚の整理をしていて見つけました。
 
『1973年における東京のヤング1973人の発言』
この年デパートの東京大丸が主催、平凡出版(現在のマガジンハウス)毎日新聞、
そして電通が協賛して行われたオピニオン募集です。
 
毎日新聞一面にデカデカと広告が出されて、入賞者10名パリ10日間の旅ご招待。
つまり何項目かのテーマの中の一つを選んでそれに対する意見発言を
葉書一枚に、文章でもイラストでも書いて出せば、
パリに行けると。
 
そのテーマとは、

  • 日本列島を考える
  • 生きる価値
  • セックス
  • 映画、テレビ、音楽
  • 情緒の発見
  • ファッション
  • 遊び
  • 私にとっての東京
  • ノンセクション
でした。
その頃はまだ、<地球を考える>は無かったみたいです。
当然私は、農学部出身ですから、①これからの日本の農業について書きました。
ちゃんと下書きまでして、
でももう一枚⑩当時何となく浮かんだ事を思いつくまま書いてみました。
葉書に一杯になり書き切れないので矢印で引っ張り横にして、
まあぐちゃぐちゃな感じで、
でもまいいかと二枚ポストに出しました。
 
そんなことはすっかり忘れて仕事で甲府に行っていた時、
宿に突然、かみさんから電話(その年に結婚していました)。
「あたった、当たった。新聞に出てる、パリよパリ」
「何が?」
「ほらいつか書いて出したでしょ、懸賞論文、鼻毛、鼻毛」
「あーーーあの毎日新聞の、そりゃ当たったじゃなく入選だろ!」
 
てな訳でいい加減?な気持ちで書いた方が入選してしまいました。
 
後日その1973人分の作品が載った本が平凡出版から出されて
うちにも一冊本棚に置きっ放しになっていたのです。
なんと36年前の若者の意見です。
 
そのパリ行き入選者10人の作品のトップに私の文章が掲載されています。
それをここに移してみます。
 
 
『鼻毛の抜き方』土平哲生
 
 たとえば、国立の病院へ歯の治療に行った時とか、なかなかやって来ないバスを
待っている時とか、ふとその時間をもて遊んでいる時、なんとなく鼻がムズムズする
ことがあるでしょう。
 
 この頃は排気ガスやらスモッグやらで、空気が汚れているせいでしょう、
鼻毛がやたらのびるのです。
 
外からフッとつまんでみても5,6本長いのがつかめるんですよ。
そこで、そのなかで太そうなのを一本、爪でつかんで、息を殺してムッと、
力いっぱいひっぱるのです。
 
うまくいけば、長くて太くておまけに根まで黒いのが抜けてきます。
そんなときは自分でも痛いのも気にならずそれに見とれるくらいです。
すぐ捨てるのは惜しくて、てのひらにくっつけてみたり、爪先でくるくる回して
みたり、それは楽しいものです。
 
 しかし、途中で切れたり、抜けそこなったりしたら、痛いものです。
思わず涙がでます。
それを防ぐためには、しっかりと毛がつまめるよう、
爪先の断面を平らにしておくことです。
もうひとつ注意することは、鼻の奥の方の古そうなのを抜くことです。
まちがっても、つかみやすいからといって、入口のところの、あまり太くない
若いやつを抜かないことです。
これは、抜けても抜けなくても痛いことこのうえありません。
 
はたから見れば、汚らしいというか、いやらしいというか、
あまりいい図ではないことは確かです。
 
しかし歯を抜かれるのを待っていたり、バスを待っているとき、なんとなく
鼻がムズムズするのはなぜでしょう。
(東京都大田区北馬込1-2-2-202 25才会社員)
 
 
 
なんともまあ他愛もない文章でしょう。
これで7000通以上の中から選ばれたなんて、
おそらく⑩ノンセクションにはろくな物が無かったに違いありません。
 
でも選考委員には、石川弘義氏、永六輔さん、落合恵子さん、今野雄二氏
小林康彦さん、サトウサンペイさん等、当時錚錚たるメンバーです。
 
パリ10日間の旅にはちょうど男5名女5名が選ばれました。
25歳の私が一番の年長です。
翌年1974年5月に連れて行ってもらいました。
もちろん私にとって最初の海外旅行です。
いずれ機会がありましたら、当時と今の海外旅行について比べてみても
いいかと思います。(なんと羽田発です)
 
余談ですが、その10名の中の一人に
現在大活躍中の作家、林真理子さんがいらっしゃいました(当時大学生)。
 
 
――――とまあこれが文章を書くきっかけになった最初だったかも知れません。
 
 

2020-07-20 09:25:43

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