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「エピソード―6」

「エピソード―6」

『ジョギングの楽しみ』


いけね、雨降って来ちまったよ。

そこはかとなく沈丁花の香りが漂ってくる秋の夕暮れ時。

毎週休みの月曜日の夕方、自宅から甲州街道、久我山病院、
寺町通り、甲州街道と、約6kmのジョギングを10年続けている。

まあ30分位は大丈夫だと思って走り出して2500m位、
寺町の裏側辺りまで来たら、ポツリポツリ雨粒。
本降りになる前に早く帰ろう。

病院の手前を左に曲がってショートカットだ。
小道に入って、暫くして、後ろから自転車が近づいて来た様だった。

“チリンチリン”小さなベルが鳴る。
狭い道を左によけながら走る。

道は一本。何時まで経っても、自転車は追い抜いて行かない。
あれ、おかしいな。曲がる道はないし、
もうとっくに追い抜いてもいい筈なのに。

直ぐ後ろでチリンチリン鳴らして、タイヤの音までしてたのに。

思わず振り向いた。
何も誰もいない。
引き返したのかな、まいいか。
そのま走り続けた。

雨は上がっていた。気がつくと右手に中央高速らしいものが見える。
見えるということは、、、やや明るくなった。

もうそろそろ暗くなっても良い頃なのに、逆に明るくなっている。
みるみる明るくなってまるで真昼だ。

民家の塀に沿って小道に入った筈なのに
周りは背の高い夏草が生い茂って家らしき物はない。

小さい頃よく行った、そう蓼科の山荘から見晴台に向かう小道みたいだ。
ヒマワリが咲いていてトンボも飛んでいる。

あれーーーーここはどこだ、おかしいぞ、
呼吸が乱れた、心臓がドキドキした。

明らかにおかしい。こんな筈はない。
どーーしたんだろう。スピードを上げた。
先方にお寺らしい屋根が見えた。

いつの間にか本堂らしき建物の前に出ていた。左手に鐘楼がある。
手水場の後ろから女の子が現れた。

「ドキッ、」
「あれっ、ひょっとして、、、、久しぶり。あれから何処行ってたの?」

以前内でバイトしてて、ふらっといなくなったあの佐賀のお寺の娘さんだ、
お父さんから手紙頂いた、あの娘だ、思わず近づいて行こうとしたが、
彼女表情が険しい、いつも笑っていたのに。

「来ちゃいけない、早く、早く、走って、走って。右手の門から外に出て!」
「えっ、何、何?」
「ボスの来る所じゃないから早く外に出て!」
にらみつける様に私を促した。

訳も分からず、言われるまま早足に門の外に出た。
あれっ、ここはいつもの寺町通りだ。辺りは暗い、真っ暗だ。

前からライトを点けたバスが近づいてくる。
いつもの、マスクをした運転手だ。
が、よく見ると、マスクをしているのは運転手じゃない、
白衣を来た若い男だ。

「気が付かれた様ですね。」


後で聞いたら、そのおばさん、自転車に乗って買い物の帰り、
道が狭いので、ベルを鳴らして追い抜こうとしたら、
前を走っていた私が、いきなりふらっと倒れたらしい。

慌てて家に帰りご主人と息子さんを連れて
この病院まで運んでくれた、と言う。
ふうん、お陰で九死に一生を得た訳だ。

と言うことは、あのお寺の彼女、
ぼくをあの世からこちらへこの世に生き帰らせてくれたんだ。
それでこちらへ来ちゃいけない、って怖い顔して言ったんだ。

でももう一度会いたいな。


なーんてね、、、
ジョギングの楽しみの一つは、こんなんに色々空想できること、なんせ40分は長いから。


―――これ(話)は本邦初公開です、もう今は走っていませんが10年位前までは毎月曜に走ってました。何回も転んでケガしまして夜のジョギング禁止令が出ました。  

2020-06-19 11:18:47

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