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「エピソード―7」

「エピソード―7」

―――前に『ラベンダー(見知らぬ明日)』で
あえなく北海道旅行を断られてしまったゴルフ男の
苦し紛れの言い訳を紹介すると言いました。
少し間が空きましたが、
彼が熱く語ってくれました。
まあ聞いてやってください。
 
 
『女性を口説けなかった男の独り言』
 
<あっそうか、いや参ったな。まさに家庭的というか、
食の原点みたいな店だ。>
良い店だし、料理もおいしい。
しかしこの店では女性を口説けない。
 
先ず雰囲気が明るすぎる。料理がシンプル。
そして現実感が溢れている。
通りが見える。入り口から客が入るのが見えてしまう。
当然二人だけの世界は作れない。
 
女性を口説くとしたら、理想は夜景が美しい高層ビルの50階。
料理はメニューを読んだだけで舌がもつれそうなフランス料理。
豊潤な香りのワイン、量は少ないが
こってりとボリュウム感のある料理。
内容の混んだ料理ほどベター。
薄暗い店内、静かな音楽。
 
何より大切なのは、現実感の無さ、プラス一種の興奮感。
高層ビルの上というのは人をそれだけで、
興奮状態にすると言われている。
つまり現実から切り離して二人だけの世界にしてしまう。
これが基本条件。
 
当然それだけで当惑してしまう相手もいる。
それはそれとして、どんどん会話でリラックスさせ
ゆったりした雰囲気を作ってしまう。
ユーモア、ギャグをちりばめた自分の体験談、これが大事。
相手が身を乗り出して、「ねえそれでそれで、」
ときたらしめたもの。
 
他人の話はタブー、誰それさんがね、お父さんが、兄が、、、
これはNG最低、とにかく自分の話をすること。
二人で来ているのに、どうして他人の話をしなくちゃいけないのか。
 
ややもすると自分の親戚兄弟友人知人の自慢話を得意げに
喋る人がいるけど、最低。
これは一番相手を白けさせる。
「そうね、すごい。その人はね、であんたは何なの。」
 
些細なことでも己の考え、行動、体験を話すこと。
やや大風呂敷を広げてもgood。
「うっそー」「そんなことありー?」
「そうそれはオーバーだけどね」
「なあんだ、でもやるじゃん」
 
食べる行為は自分をさらけ出すこと。
自分の本性を相手に見せること、
無防備になること。そこが一番のポイント。
つまり相手はそれを無意識の状態で望んでいる訳で、
だからこそ食事に来たんだから、普段とは違う
中身の濃い話になろうと言うもの。
 
そしてここで食事というのは、アペリティフ、
前菜に始まって、魚、肉、
そしてスウィーツ、エスプレッソ、
さらには食後酒まであるのが望ましい。
 
食べるために来たのだけど、本当はそれだけじゃない。
二人だけの共通の時間を過ごしながら、
しかもお互いの本性をそれらしく、さらしながら、
いかに相手の本音を引き出すか、
意識の底を探り合いながら、、、
 
古い話だけど、
湾岸戦争の時の、スカッドミサイルとパトリヨットミサイルの
相互入り乱れての撃ち合いみたいな、
いかに自分を認めさせるか、相手の本意を知るか。
そうか、そう言うか。だったらこう返してみるか。
 
上面の話はいらない、本音を言わせること、探り出すこと、
<どうしようか、ええい、ここまで来たんだから全部話しちゃえ>
そして相手の本音にさりげなく、傷つかない程度に
メスを入れてみる。
「そうは言っても本当のところはこうなんじゃないの?」
<えっ、うそっ私そんなこと思ってもみないのに、
でももしかしたら、そうかも。>
お互いの距離が近づき、二人きりの時間と空間に浸る。
 
視覚、聴覚、嗅覚、味覚、触覚、手、足、指、唇、目、瞳、耳、
喉、胃袋、頭脳、全てを駆使した壮絶なるバトルである。
そこにこそ人生の大きな楽しみの極致がある
と言っても過言ではない。
 
空腹を満たしたい本能、それが満たされたら
次は自ずと、性欲。
ここに口説きの力量が問われる。
 
一緒にご飯食べたい、食べることによって自分の裸を見せる。
これはとりもなおさず全ての私を見せてもOKよ、
と言うサインなので、
無論本人は自覚意識がないかも知れないが、
潜在意識にはあると考えて良いだろう。
 
デザートを食べながら、
さーてと次は行きつけのショットバーで軽く一杯と、そして、、、
お腹は一杯、頭の中は次の作戦で一杯、
こんな夜ってそう何時もいつもあるもんじゃない。
こんな事で悩む自分にガンバレと言ってあげよう。
 
 
だからして食事して、
あー美味しかった、ごちそうさま。じゃあね、バイバイ。
では、へたくそ、どじ、間抜けと言われても仕方がないのだ。
相手はその気で来ているのに
無意識の意識を目覚めさすことができなかったのだから、
反省してもっと女性のことを勉強しなさい、
と言うことかな。
 
とまあこんなセオリーがあるのだがどこをどう間違えたか
ついポロッと≪ラベンダー≫言ってしまったのが運の尽き。
 
そう現実ここは明るーい味噌レストラン
なんにしても、この店は開けッぴろげ、オープンすぎる。
ちょっとここでは雰囲気的に難しいこれ以上突っ込んだ話は無理!
勿論彼氏がいる、であろうこの女性を無理矢理口説こうとか
そんな気はさらさら無い。(下心が全く無いとは言えないけど)
 
一緒に楽しい時間を過ごせたらいいな、
美しい景色で一緒に感動できればいいな、とか。
美味しい料理で愉快に飲んで喋ってもっとお互い親しくなれれば、
軽いノリで誘ってはみたものの、
ひょっとして、、、、、
 
けど、、、、、、、、
味噌の話から逆に彼氏を思い出させてしまったみたい。
完敗!
墓穴を掘るとはこのことか。
まだまだ修行がたりないか。
 
―――――若干彼は<吉行淳之介>に傾倒しているみたい。
口説きの力量をもっと身につけた彼の告白、次に期待しよう。
 
―――とまあ何と懐かしい、今とは何かズレがありますが。

2020-06-24 09:20:12

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